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オキシトシンによるアナフィラキシー

2022年1月掲載

薬剤 オキシトシンホルモン剤(抗ホルモン剤を含む)
副作用 アナフィラキシー
概要 32歳、女性。2妊1産。既往歴は下唇血管腫、アレルギー歴はなし。妊娠37週6日で、破水と陣痛発来のため入院となった。入院後、L3/4椎間より硬膜外カテーテルを挿入し、自己調節鎮痛法による硬膜外無痛分娩を開始した。疼痛コントロールは良好で、順調に分娩進行し、怒責のみで頭位経腟分娩に至った。分娩3分後、子宮弛緩予防目的にオキシトシンの持続投与を開始した。
分娩12分後から、腹部の搔痒感と全身の膨疹、鼻閉感、脈拍132bpmの頻脈を認めた。オキシトシンによるアナフィラキシーを疑い、オキシトシン投与は中止した。分娩32分後、気道の開通は良好で喘鳴はなく、意識清明だった。血圧118/71mmHgで循環は保たれていたが、呼吸困難感の訴えが出現し、全身の膨疹が拡大、脈拍140bpmを超えてきたため、急速な症状の進行と判断した。アドレナリンを筋注し、さらにファモチジンとクロルフェニラミンマレイン酸塩の配合液、ヒドロコルチゾンコハク酸エステルナトリウムを点滴投与した。投与後より頻脈と膨疹、呼吸困難感は徐々に改善し、血圧の上昇もなかった。その後経過は良好であり、分娩3日後に退院となった。

監修者コメント

無痛分娩直後にアナフィラキシーを発症した一例である。被疑薬としては、子宮弛緩予防目的に投与したオキシトシンが考えられている。添付文書にも重大な副作用として、ショック、アナフィラキシーが記載されている。妊婦のオキシトシンによるアナフィラキシーの報告は稀であるが、妊娠・出産はアナフィラキシーを重篤化・増幅させる因子であり、分娩誘発や弛緩出血などでオキシトシンを使用する際には、慎重な経過観察が必要である。

著者(発表者)
渡邉萌衣ほか
所属施設名
聖路加国際大学病院
表題(演題)
無痛分娩直後にアナフィラキシーを発症した一例
雑誌名(学会名)
日本麻酔科学会関東甲信越・東京支部 第61回 合同学術集会 プログラム・抄録集(Web) P17-06-61 (2021)
第61回 日本麻酔科学会関東甲信越・東京支部合同学術集会(2021.9.4-10.4)

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