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アザシチジンによるSIADH

2021年12月掲載

薬剤 アザシチジン腫瘍用薬
副作用 SIADH
概要 86歳、男性。X-1年4月頃から汎血球減少を認め,X年3月に当科紹介となり骨髄異形成症候群(MDS)と診断された。汎血球減少がさらに進行し、アザシチジン(AZA)導入目的に同年11月に入院した。入院時の骨髄検査でMDS-EB1へ進行しており、11月10日より高齢のため、通常の80%に減量してAZA7日間投与を開始した。14日から軽度の低Na血症を認め、27日には血清Na 128mEq/Lまで減少した。無症候性であり脱水所見はなく、低浸透圧血症(263mOsm/kg)、高張尿(404mOsm/kg)、血清バゾプレシン測定感度以上(0.6pg/mL)、ナトリウム利尿の持続(尿中Na 68mEq/L)、腎機能正常(Cr 0.89mg/dL)、副腎皮質機能正常(血清コルチゾール 6.02μg/dL)であった。中枢神経疾患や肺疾患を疑うような症状や検査所見はなく、AZAによる薬剤性SIADHと診断し、飲水制限と食塩投与により低Na血症の改善を認めた。2コース目以降は5日間投与に減量し、低Na血症を認めることなく経過している。

監修者コメント

DNAメチル化阻害薬であるAZAは、MDSや急性骨髄性白血病の治療薬として用いられている。本症例は、MDSに対するAZA投与中に抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)を発症した1例である。薬剤性SIADHの原因には、抗けいれん薬や抗うつ薬の他にシスプラチンやビンカアルカロイド系などの抗がん剤があるが、AZAによるSIADHの報告はこれまでにない。稀な合併症ではあるが、AZA投与中は定期的な電解質のチェックなどが必要であろう。

著者(発表者)
宮部渉平ほか
所属施設名
住友病院総合診療科ほか
表題(演題)
骨髄異形成症候群(MDS)に対してアザシチジン(AZA)投与中にSIADHを発症した1例
雑誌名(学会名)
第232回 日本内科学会近畿地方会 41 (2021)
第232回 日本内科学会近畿地方会(2021.6.26)

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