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オラパリブによる門脈血栓症

2021年11月掲載

薬剤 オラパリブ腫瘍用薬
副作用 門脈血栓症
概要 50歳代、女性。201X年に左乳癌Stage II Aに対して左乳腺部分切除術およびセンチネルリンパ節生検施行。術後補助療法として内分泌療法を施行したが術後5年目に多発骨・肝・リンパ節転移再発し、以後殺細胞性抗癌剤・内分泌療法薬・分子標的薬による治療を継続した。骨・リンパ節転移は小康状態であったが、肝転移は縮小・増悪を繰り返した。その後、BRCA2病的変異陽性と判明したため、オラパリブの投与を開始した。オラパリブ開始後、肝転移は縮小し有効と判断した。貧血・好中球減少・血小板減少の副作用を強く認め、休薬・減量・輸血が必要であった。血小板値はCTCAE(Ver5.0)G2で推移していた。
オラパリブ投与開始後8ヵ月目の治療効果判定目的のCT検査にて、門脈本幹から右枝に門脈血栓を指摘された。アンチトロンビンIII製剤(AT III)による抗凝固療法を5日間×2クール行い、血栓は消失した。血栓溶解確認後、2ヵ月目の画像検査で同部に門脈血栓の再形成を認めた。AT IIIによる抗凝固療法を再施行したところ血栓は消失し、2ヵ月経過時点では血栓の再形成はない。経過中、オラパリブは減量することなく継続した。

監修者コメント

オラパリブは、腫瘍細胞のDNA修復機構に着目し、損傷したDNAを修復するPARP(ポリADP-リボースポリメラーゼ)の働きを阻害することで、腫瘍細胞の増殖を抑制する薬剤である。化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能または再発乳癌などの治療薬として使用されている。本症例は、乳癌再発に対してオラパリブ投与中に門脈血栓症を繰り返した1例である。本薬剤による門脈血栓症の発症はこれまでに報告はないが、本症例は基礎疾患に肝疾患はなく、肝転移も画像上消失しており、血小板数は低値で凝固因子異常もなかったため、本薬剤の有害事象である可能性があり、注意が必要である。

著者(発表者)
西尾美奈子ほか
所属施設名
大阪府立病院機構大阪国際がんセンター腫瘍内科ほか
表題(演題)
乳癌再発に対してオラパリブ投与中に門脈血栓症を繰り返した一例
雑誌名(学会名)
第29回 日本乳癌学会学術総会 抄録集(Web) EP-16-3-4 (2021)
第29回 日本乳癌学会学術総会(2021.7.1-3)

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