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オナセムノゲンアベパルボベクによる血栓性微小血管症

2021年10月掲載

薬剤 オナセムノゲンアベパルボベクその他
副作用 血栓性微小血管症
概要 1歳11ヵ月、女児。X-1日からプレドニゾロン(PSL)を開始し、X日にオナセムノゲンアベパルボベクを投与した。X+5日、頻回嘔吐、肝機能障害、血小板減少、LDH上昇などを認めた。PSLを増量したが、高血圧、貧血、腎機能の悪化を認めた。降圧薬や輸血などで加療したが、無尿となった。X+8日から血液透析を開始し、薬剤性血栓性微小血管症(TMA)を疑って血漿交換を併用した。便培養は陰性で、エクリズマブを投与したが明らかな効果はなかった。X+14日、心不全のため当院転院となった。血液透析を持続療法に変更し、心不全やTMAの増悪を認めず、X+30日に透析を離脱した。確定診断のために腎生検を施行した結果、TMAの慢性修復期と腎病理学的に診断した。現在、TMA発症から半年が経過したが、軽度の高血圧、尿異常が残存している。

監修者コメント

脊髄性筋萎縮症は、運動神経の生存に重要な働きをするSMN1遺伝子の異常による筋萎縮と進行性筋力低下を特徴とする遺伝性疾患である。特にⅠ型では、呼吸筋の筋力低下による呼吸不全から致死的となることが多い。2020年には、非増殖性アデノ随伴ウイルス9型を利用して、欠落しているSMN1遺伝子を細胞内に補充する遺伝子治療用ベクター製品であるオナセムノゲンアベパルボベクが保険適用となった。画期的な治療薬であるが、薬剤性血栓性微小血管症(TMA)を発症した症例が本症例を含めて4例報告されている。決して稀な有害事象ではない可能性があり、投与に当たっては有害事象に関する慎重な経過観察が必要である。

著者(発表者)
久富隆太郎ほか
所属施設名
大阪市立総合医療センター小児総合診療科ほか
表題(演題)
オナセムノゲンアベパルボベク投与後に認めた血栓性微小血管症の腎病理学的検討
雑誌名(学会名)
日本小児腎臓病学会雑誌 34(増刊1) 164 (2021.5)
第56回 日本小児腎臓病学会学術集会(2021.7.9-10)

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