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トラニラストによるStevens-Johnson症候群、胆管消失症候群、肝障害

2021年10月掲載

薬剤 トラニラストアレルギー用薬
副作用 Stevens-Johnson症候群、胆管消失症候群、肝障害
概要 生後6ヵ月、男児。生後5ヵ月9日に口唇裂に対して口唇形成術を施行され、術後8日目からトラニラストの内服が開始となった。内服後11日目から発熱と軟便を認めた。その後も発熱が持続し、内服後14日目から体幹部を中心とし顔面四肢に広がる全身性紅斑を認めたため、当院救急外来を受診した。
発熱と全身性紅斑の原因として感染症や薬疹等が鑑別として挙げられ、薬疹疑いに対しトラニラストの内服を中止した。入院2日目にかけて速やかに解熱したが、全身性紅斑は増悪した。肛門粘膜所見も伴っていることからStevens-Johnson症候群(SJS)を疑い、皮膚病理所見でケラチノサイトの壊死を認めたためSJSの診断に至った。プレドニゾロン(PSL)で治療を開始し、その後は新規病変の出現を認めず、既存の皮疹も痂皮化傾向を示した。入院8日目からPSLを漸減し、20日目に終了した。
また、皮膚症状が改善を示してからも、入院時に認めた胆汁うっ滞性肝障害が遷延したため、SJSに合併したトラニラストによる薬物性肝障害が疑われた。経皮的針肝生検を実施し、各種所見から薬物性肝障害による胆管消失症候群と考えられた。入院9日目よりウルソデオキシコール酸(UDCA)と脂溶性ビタミンの投与を開始し、肝機能の正常化までに発症から7ヵ月を要した。

監修者コメント

トラニラストは抗アレルギー薬としてだけでなく、肥厚性瘢痕やケロイドに対する治療薬として本邦において唯一保険適用を有する薬剤である。小児領域では口唇裂に対する口唇形成術後に使用されることが多いが、これまでに重篤な副作用の報告はない。本文献では、トラニラストの投与により、SJSと薬物性肝障害による胆管消失症候群を発症した稀な1例を報告している。SJSは発熱に伴い粘膜疹と全身性紅斑をきたす疾患であり、原因の多くは薬剤性であるが、本薬剤によるSJSは本症例が初の報告である。比較的安全に使用できる薬剤として認識され汎用されているが、副作用について常に注意する必要がある。

著者(発表者)
藤井まどかほか
所属施設名
済生会横浜市東部病院総合小児科ほか
表題(演題)
トラニラストによるStevens-Johnson症候群と胆管消失症候群の合併
雑誌名(学会名)
日本小児科学会雑誌 125(5) 784-790 (2021.5)

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