シタグリプチンによる首下がり症候群、頸部伸筋群ミオパチー
2021年10月掲載
薬剤 | シタグリプチンその他の代謝性医薬品 |
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副作用 | 首下がり症候群、頸部伸筋群ミオパチー |
概要 | 63歳、男性。2019年2月から糖尿病に対しシタグリプチン50mg/日内服が開始された。12月中旬から後頸部痛、2020年1月中旬から首下がりが出現し、4月上旬に精査入院された。 頸部は前屈位で、アルドラーゼ14.7 U/Lと上昇していた。頸部伸展筋の筋力低下(MMT3)を認め、頸部MRIでは後頸部筋群(僧帽筋、頭半棘筋、頭板状筋)にshort inversion time inversion recovery(STIR)高信号を認めた。首下がり症候群の原因は頸部伸筋群に限局するミオパチーと考えた。発症前にシタグリプチンの内服が開始されていたことから薬剤性の関与を疑い、入院後に同薬を中止したところ入院5日目頃から首下がりは徐々に改善傾向となり、入院10日目には姿勢は正中位に改善した。中止1ヵ月後の採血ではアルドラーゼ11.7 U/Lと改善傾向となり、頸部MRIでは後頸部筋群のSTIR高信号は淡くなっていた。 |
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シタグリプチンはdipeptidyl peptidase(DPP)-4阻害薬であり、2型糖尿病の治療薬として用いられている。本症例は、シタグリプチンの投与後に首下がり症候群を発症した1例である。首下がり症候群は、頸部筋群の機能異常により首が常に垂れ下がった状態を示す病態であり、過去にもDPP-4阻害薬による首下がり症候群の報告がある。DPP-4阻害薬開始後に首下がりを認めた場合は、同薬の関与を疑い、内服中止を検討すべきである。
- 著者(発表者)
- 大田貴弘ほか
- 所属施設名
- 国立病院機構旭川医療センター脳神経内科
- 表題(演題)
- Dipeptidyl peptidase(DPP)-4阻害薬の関与が疑われた首下がり症候群の1例
- 雑誌名(学会名)
- 臨床神経学 61(5) 329-331 (2021.5)
第106回 日本神経学会北海道地方会
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