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エンコラフェニブ、ビニメチニブによる肺障害

2021年8月掲載

薬剤 エンコラフェニブ腫瘍用薬
ビニメチニブ腫瘍用薬
副作用 肺障害
概要 73歳、男性。20XX-2年11月に鼻尖部・鼻翼部悪性黒色腫と診断され、20XX-1年2月よりダブラフェニブとトラメチニブの併用療法を開始した。同年11月に再発を認めペムブロリズマブを4コース施行した。20XX年1月にKL-6 700U/mLと上昇を認め、胸部CTなどの精査が行われたが間質性肺疾患(ILD)の所見は認められなかった。同年3月に再発を認め、4月よりエンコラフェニブとビニメチニブの併用療法を開始した。嘔気、心窩部不快感が強く6月に一時休薬し、1ヵ月後に内服を再開した。再開1週間後より発熱、咳嗽が出現し、徐々に呼吸困難の増悪を認めた。近医を受診し、低酸素血症を指摘され当科紹介となった。
胸部CTで両側びまん性にすりガラス影、網状影を認めた。経過、画像所見よりエンコラフェニブ/ビニメチニブによる薬剤性肺障害を疑い、内服薬は全て中止した。挿管、人工呼吸器管理を開始し、肺胞洗浄液(BALF)等の各種培養から細菌感染は否定的と考え、メチルプレドニゾロンによるステロイドパルス療法を開始した。LDHとCRPは速やかに低下し、呼吸状態も改善、第3病日に抜管し第9病日に酸素投与を終了した。胸部CT所見も改善を認め、ステロイド量を漸減しプレドニゾロン30mg/日で退院となった。

監修者コメント

BRAF遺伝子変異を有する根治切除不能な悪性黒色腫に対して、BRAF阻害剤であるエンコラフェニブとMEK阻害剤であるビニメチニブの併用療法が開始されている。副作用として、皮膚悪性腫瘍、眼障害、心機能障害、横紋筋融解症、肝機能障害などが報告されているが、本症例のような間質性肺疾患は稀である。本症例では、免疫チェックポイント阻害薬であるペムブロリズマブによる前治療歴があり、このことが薬剤性肺障害の発症に関連した可能性があると考えられている。免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬は今後も使用頻度が高くなることが予想され、副作用としての薬剤性肺障害についても十分な注意が必要である。

著者(発表者)
後藤希ほか
所属施設名
中東遠総合医療センター呼吸器内科
表題(演題)
エンコラフェニブ/ビニメチニブによる薬剤性肺障害が疑われた1例
雑誌名(学会名)
日本呼吸器学会誌 10(2) 144-148 (2021.3)

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