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カルボプラチンによる低ナトリウム血症

2021年7月掲載

薬剤 カルボプラチン腫瘍用薬
副作用 低ナトリウム血症
概要 58歳、女性。便秘と下痢のため近医内科を受診し、経腹超音波検査にて著明な腹水と、腹腔内を占拠する嚢胞性充実性腫瘍を認め当院婦人科に紹介された。子宮内膜組織診でserous adenocarcinomaを認め、p16、p53、WT-1が陽性であることから卵巣癌の子宮転移が疑われた。術前化学療法としてTC療法(パクリタキセル+カルボプラチン)を開始したところ、7日目に著明な低ナトリウム血症、構音障害、四肢の運動失調、けいれん発作を認めた。3%高張食塩水で緩徐にNa補充を行い、中枢神経症状の改善を認めた。腹水貯留のため正確な体液量評価はできていないが、症状の経過や検査値から、SIADHと塩類喪失腎症の合併が疑われた。症状軽快後、内服でのNa補充下にTC療法2サイクル目を施行したが、著明な低ナトリウム血症は認めなかった。

監修者コメント

白金製剤であるカルボプラチンは、婦人科悪性腫瘍をはじめとする様々な悪性腫瘍の治療に広く使用されている薬剤である。本症例は、卵巣癌に対する化学療法中に著明な低ナトリウム血症を認め、カルボプラチンによる抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)や尿細管障害が原因として考えられている。頻度は少ないものの、白金製剤の投与中にSIADHや塩類喪失腎症による低ナトリウム血症を合併することがあるため、定期的な電解質のチェックが必要である。

著者(発表者)
甲斐一華ほか
所属施設名
東広島医療センター差婦人科ほか
表題(演題)
卵巣癌化学療法(カルボプラチン)が誘因と考えられる低ナトリウム血症の1例
雑誌名(学会名)
日本婦人科腫瘍学会雑誌 39(1) 416 (2021.1)
第62回 日本婦人科腫瘍学会学術講演会(2021.1.29-2.11)

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