トリフルリジン・チピラシル塩酸塩による結膜充血、角膜潰瘍、角結膜上皮障害
2021年7月掲載
薬剤 | トリフルリジン・チピラシル塩酸塩腫瘍用薬 |
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副作用 | 結膜充血、角膜潰瘍、角結膜上皮障害 |
概要 | 56歳、女性。既往歴に関節リウマチ、痔核、脂質異常症、糖尿病がある。2018年9月にS状結腸癌多発転移を認め、術後化学療法を11ヵ月間施行したが腫瘍の増大を認めたため、2019年8月からトリフルリジン・チピラシル塩酸塩(FTD/TPI)90mg/日の内服を開始した。これまで眼科既往歴はなかったが、11月の4コース目を開始する前日から充血、眼の違和感を自覚したため当科を紹介受診となった。 視力は右1.0(矯正不能)、左(1.0×-1.00D)、両眼の結膜充血を来しており、角膜のほぼ全周に異常上皮が侵入していた。両側性に角膜侵入した異常上皮の一部ではフルオレセイン染色性を有しており、さらに右眼には上方に角膜潰瘍を認めた。薬剤性角結膜上皮障害を疑い、ガチフロキサシン点眼液およびベタメタゾンリン酸エステルナトリウム点眼液による治療を開始した。発熱を伴う貧血、心窩部痛のためFTD/TPIの内服が中止され、受診から1週間で結膜充血・角膜潰瘍は改善し、異常上皮も消退した。その後、抗腫瘍薬の変更に伴い結膜充血・角膜潰瘍は再燃せず、視力は右1.0(矯正不能)、左(1.0×-0.50D)と視力障害を来すことなく経過した。 |
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経口抗腫瘍薬であるFTD/TPIの投与中に角膜上皮障害を来した1例である。FTDはチミジン三リン酸の合成を阻害することでDNA合成を阻害し、TPIはFTDの分解を遅らせるとともに、抗血管新生作用を持つことが特徴である。同様の代謝拮抗薬である5-FUの有害事象として、涙道障害・角結膜障害が知られているが、FTD/TPIによる角膜障害の報告はない。抗腫瘍薬投与中に眼症状を認めた場合には、眼合併症を考慮し、眼科専門医と連携しながら適切な処置を行うことが重要である。
- 著者(発表者)
- 吉岡誇ほか
- 所属施設名
- 藤枝市立総合病院眼科ほか
- 表題(演題)
- 抗腫瘍薬トリフルリジン・チピラシル塩酸塩配合錠(FTD/TPI)投与中に角膜障害を来した1例
- 雑誌名(学会名)
- 日本眼科学会雑誌 125(2) 129-135 (2021.2)
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