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リファキシミンによるビタミンK代謝異常

2021年6月掲載

薬剤 リファキシミン抗生物質製剤
副作用 ビタミンK代謝異常
概要 77歳、女性。201X-3年からC型肝炎代償性肝硬変で当科通院中であり、肝細胞癌に対して2度のTACE施行歴があった。201X-1年4月よりDAA製剤を導入したところ肝性脳症を併発した。以降、肝性脳症を繰り返す状況が続いていた。レボカルニチンと排便コントロールにてDAA製剤を完遂し、その後SVRを得ることができた。その後も肝性脳症の増悪を認めたため、リファキシミンの内服を開始した。201X年6月から、それまで正常化していたPIVKA-Ⅱが単調増加し同年12月には658に至った。ダイナミックCT検査を施行しても、肝細胞癌の再発を認めなかった。その後もPIVKA-Ⅱの上昇が続いていたためリファキシミンによるビタミンKの代謝異常を疑い、ビタミンKの投与を開始したところPIVKA-Ⅱは正常範囲まで改善した。

監修者コメント

リファキシミンは、難吸収性のリファマイシン系抗菌薬であり、肝性脳症における高アンモニア血症の治療に使用されている。腸内細菌のDNA依存性RNAポリメラーゼに結合し、RNA合成を阻害すると考えられている。本症例は、リファキシミンの内服により肝細胞癌のマーカーであるPIVKA-IIが著明に上昇した肝性脳症の一例である。PIVKA-IIの上昇については、リファキシミンの長期内服による腸内細菌叢の変化を原因としたビタミンK2吸収障害やビタミンK代謝異常などが考えられている。本薬剤の副作用として便秘・下痢や偽膜性腸炎などがあるが、ビタミンKの代謝異常を来した報告はなく、興味深い一例である。

著者(発表者)
中川亜実ほか
所属施設名
佐野厚生総合病院消化器内科
表題(演題)
リファキシミン内服によりPIVKA-IIが著明に上昇した肝性脳症の一例
雑誌名(学会名)
日本消化器病学会関東支部 第362回 例会 プログラム・抄録集 26
第362回 日本消化器病学会関東支部例会(2020.12.5-25)

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