ビカルタミドによる子宮内膜症
2021年6月掲載
薬剤 | ビカルタミド腫瘍用薬 |
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副作用 | 子宮内膜症 |
概要 | 74歳、男性。限局性前立腺癌に対してビカルタミド単剤によるアンドロゲン遮断療法を施行されていた。CT検査で、膀胱頂部外側に2.5cm大の腫瘤を指摘された。MRI検査では、腫瘤は分葉状で、内部はT1強調画像で低信号、T2強調画像で高信号を呈し、境界はやや不明瞭であった。増大傾向のため、腹腔鏡下に腫瘍摘除術を施行した。術中所見では、病変と周囲の境界が不明瞭であったため、膀胱壁と腹膜の一部を合併切除した。最終病理組織診断は子宮内膜症であった。子宮内膜症に対するビカルタミドの影響を考慮し、投薬を中止した。前立腺癌の根治治療として後腹膜鏡下前立腺全摘除術を施行した。術後3年経過し、画像上明らかな子宮内膜症の再発を認めていない。 |
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前立腺癌に対するビカルタミド単剤によるアンドロゲン遮断療法中に発症した男性子宮内膜症の1例である。子宮内膜症は本来女性特有の疾患であり、男性では極めて稀な症例といえる。本症例は、ビカルタミド単剤投与を長期間行っていたために、血中エストロゲンが上昇し、子宮内膜症の発症および増殖に影響したと考えられる。男性においても、本症例のようにエストロゲン作用が増強し得る治療を行う場合は、子宮内膜症が発生する可能性があることを認識すべきであろう。
- 著者(発表者)
- 岩隈景子ほか
- 所属施設名
- 産業医科大学医学部泌尿器科学講座ほか
- 表題(演題)
- 前立腺癌に対するビカルタミド単剤投与中に認めた男性子宮内膜症の1例
- 雑誌名(学会名)
- 西日本泌尿器科 82(5) 550-555 (2020.12)
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