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テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物による水疱性類天疱瘡

2021年4月掲載

薬剤 テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物その他の代謝性医薬品
副作用 水疱性類天疱瘡
概要 66歳、男性。初診の10年以上前から2型糖尿病等に対し内服治療を行っており、5年7ヵ月前からDipeptidyl Peptidase-4(以下DPP-4)阻害薬であるテネリグリプチン臭化水素酸塩水和物(以下TG)を内服していた。初診の3ヵ月前から顔面、体幹に瘙痒感のある紅斑が出現し、その後水疱、びらんになった。かかりつけの内科医処方のベタメタゾン吉草酸エステル・ゲンタマイシン硫酸塩混合軟膏を外用するも拡大し、1ヵ月後に近医の皮膚科を受診して上記軟膏と亜鉛華軟膏の配合剤を外用したが、徐々に皮疹が増加するため受診した。
病理組織学的に表皮下水疱と多数の好酸球浸潤を認め、抗BP-180NC16a抗体82.0 U/mL、TGの薬剤性リンパ球刺激試験(以下DLST)285%で陽性であった。以上よりDPP-4阻害薬関連水疱性類天疱瘡と診断し、処方医にTGの中止とDPP-4阻害薬以外の薬剤への変更を依頼した。また、ミノサイクリン塩酸塩およびニコチン酸アミドの内服を開始した。しかし、1ヵ月後も水疱の新生が続き、抗BP-180NC16a抗体115 U/mLと上昇したため、近隣の総合病院へ紹介となった。

監修者コメント

TGは、インクレチンを分解する酵素であるDPP-4の阻害薬であり、2型糖尿病治療薬として用いられている。本薬剤の有害事象として、水疱性類天疱瘡の報告が増加しており、添付文書にも重大な副作用の1つとして類天疱瘡が記載されている。本症例は、TGを67ヶ月と長期間内服した後に水疱性類天疱瘡を発症しており、またDLSTが陽性であり、臨床型が炎症型で難治性であった点が特徴的といえる。本薬剤の投与中に、水疱やびらんなどの症状を認めた場合には、皮膚科医と相談し、投与を中止するなど適切な処置を行うことが重要である。

著者(発表者)
大原香子
所属施設名
大原医院
表題(演題)
薬疹・薬物障害 テネリグリプチン臭化水素酸塩水和物によるDipeptidyl Peptidase-4阻害薬関連水疱性類天疱瘡の1例
雑誌名(学会名)
皮膚科の臨床 62(12) 1675-1678 (2020.11)

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