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オラパリブによる間質性肺炎

2021年1月掲載

薬剤 オラパリブ腫瘍用薬
副作用 間質性肺炎
概要 34歳、女性。2018年3月、右乳癌の診断となり、EC療法を開始した。9月より治療をパクリタキセルに変更したが、頭痛、嘔吐などを生じ、多発脳転移、脊髄転移の診断となった。遺伝子検査でBRCA1病的変異陽性であったため、12月よりオラパリブを開始した。投与6週間後より貧血を認め休薬した。その1週間後に発熱、湿性咳嗽のため当院外来を受診し、CTで肺野全体にすりガラス影を認め、間質性肺炎の疑いで入院加療となった。入院までの経過から薬剤性肺炎と診断し、ステロイドの投与を開始した。ニューモシスチス肺炎の合併も考慮して加療し、自覚症状は軽快、退院となった。1ヵ月後のCTでも肺野陰影の改善を認め、その後はCMF療法に治療を変更し10ヵ月間継続している。現在まで呼吸器症状の再燃は認めていない。

監修者コメント

PARP(ポリアデノシン5’二リン酸リボースポリメラーゼ)阻害剤は、DNA修復を妨げ、癌細胞の細胞死を誘導することで抗腫瘍効果を示す薬剤であり、BRCA遺伝子変異陽性の乳癌や卵巣癌などの治療に用いられている。本症例は、PARP阻害剤であるオラパリブの投与により、間質性肺炎を発症した1例である。本薬剤は、副作用として嘔気、嘔吐、貧血などが知られているが、間質性肺炎の報告はほとんどない。頻度は少ないものの、間質性肺炎が発症すれば重症化し致死的となる可能性があるため、注意が必要である。

著者(発表者)
鈴木はる菜ほか
所属施設名
北海道大学病院乳腺外科
表題(演題)
Olaparib投与により間質性肺炎を発症した1例
雑誌名(学会名)
癌と化学療法47(9) 1351-1353 (2020.9)

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