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ペムブロリズマブによる劇症型心筋炎、横紋筋融解症

2021年1月掲載

薬剤 ペムブロリズマブ腫瘍用薬
副作用 劇症型心筋炎、横紋筋融解症
概要 60歳代、男性。咳嗽と労作時呼吸苦を主訴に呼吸器科を受診し、肺扁平上皮癌と診断された。ペムブロリズマブ200mg/bodyを導入し経過観察していたが、day13に倦怠感、食思不振が出現した。day14深夜に倦怠感が増強し、発熱、筋肉痛、下肢脱力を来したため救急外来を受診した。CPK 6338U/L、トロポニンI 16550pg/mLと著明高値のため、心筋炎を疑われday15未明に入院した。
フロセミド、カルペリチドでの治療を開始した。day16朝より倦怠感、下肢痛、呼吸苦が増悪した。血圧低下傾向を認めたためノルアドレナリン持続投与を開始したが、心原性ショックとなりICUに入室した。大動脈バルーンパンピング、経皮的心肺補助、体外式ペーシングを開始した。day17からプレドニゾロンを開始したが奏効せず、day18には乳酸アシドーシスが進行し、死亡した。
病理解剖により心筋組織にはCD4-/CD8+リンパ球浸潤と壊死を認め、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)関連心筋炎として矛盾しないと考えられた。横隔膜の横紋筋細胞は壊死により疎になっており、横紋筋融解症と診断した。

監修者コメント

ペムブロリズマブは近年の肺癌治療において重要なICIの1つであるが、多様な免疫関連有害事象(irAE)の報告があり、慎重な経過観察が必要である。本症例は、ペムブロリズマブの初回投与後に劇症型心筋炎を発症して死亡した肺扁平上皮癌の1例である。本症例では肺癌の心膜浸潤と心筋転移病巣があったため、ICI投与による腫瘍に対する活発な免疫応答が心筋炎発症に関与した可能性が考えられる。本症例のように急激な経過をとる場合があるため、ICIの投与中に心筋炎を疑わせる所見を認めた場合には、早急に鑑別診断を行い、適切な治療を行うことが重要である。

著者(発表者)
大亀剛ほか
所属施設名
社会医療法人杏嶺会一宮西病院呼吸器外科ほか
表題(演題)
Pembrolizumab初回投与後に劇症型心筋炎を発症して死亡した肺扁平上皮癌の1剖検例
雑誌名(学会名)
肺癌60(4) 335-340 (2020.8)
第59回 日本肺癌学会学術集会

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