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ゲムシタビンによる血栓性血小板減少性紫斑病/溶血性尿毒素症候群

2014年1月掲載

薬剤 ゲムシタビン腫瘍用薬
副作用 血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)/溶血性尿毒素症候群(HUS)
概要 抗癌剤治療により発症したTTP/HUSの3例についての報告。うち代表的な1例を紹介する。63歳、女性。近医にて卵巣癌、癌性腹膜炎と診断され、術前化学療法後、根治術が施行された。術後同様の化学療法が施行されたが、コントロール困難で当院腫瘍内科紹介となった。ゲムシタビン(GEM)/イリノテカンによる化学療法を施行し不変を維持していた。その後、血圧上昇傾向となり、腎機能が低下し浮腫と胸水が出現、呼吸状態が悪化したため当科紹介となった。血尿、蛋白尿と高度の腎機能低下を認め、貧血、血小板低下に加え、末梢血で破砕赤血球が確認され、LDH上昇、ハプトグロビン著明低下を呈していた。急性腎不全の溢水状態であったため緊急透析導入となった。経過よりGEMによるTTP/HUSと考え、血液透析を継続し、その後血漿交換を行ったが、効果は乏しく血液透析を継続した。徐々に全身状態は改善したが、腎機能障害は残存し、維持透析となった。その後、透析回数減少、抗癌剤治療も再開できたが、感染症を合併し死亡された。

監修者コメント

血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)と溶血性尿毒素症候群(HUS)は、共に血管内皮障害と血小板の活性化によって発症する血栓性微小血管症である。臨床症状として溶血性貧血、血小板減少、腎機能障害を認めるなど多くの共通点がある。本文献では抗がん剤による薬剤性TTP/HUSの3例を報告している。マイトマイシンによるTTP/HUSは以前から報告されていたが、近年ゲムシタビンでの報告も増加している。化学療法剤によるTTP/HUSは薬剤中止のみで改善したという報告もあるが、血漿交換(PE)を行っている報告も多い。化学療法施行時には、溶血所見や破砕赤血球の出現などに留意し、早期に対応することが重要である。

著者(発表者)
守上祐樹ほか
所属施設名
甲南病院血液浄化・腎センターほか
表題(演題)
抗癌剤治療によって発症した血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)/溶血性尿毒素症候群(HUS)の3例
雑誌名(学会名)
甲南病院医学雑誌 30(1-4) (2013.4)

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