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プロプラノロール塩酸塩による低血糖、けいれん重積

2020年11月掲載

薬剤 プロプラノロール塩酸塩その他の個々の器官系用医薬品
副作用 低血糖、けいれん重積
概要 1歳、女児。けいれん重積により救急搬送されていたが、ジアゼパム坐剤の使用により当院到着時には頓挫していた。しかし、意識障害、徐脈があったため血糖測定を行うと、血糖値が16mg/dLと低値であった。低血糖によるけいれん発作、およびその後の昏睡状態が予想されたため、ブドウ糖静注を行った。脈拍は速やかに上昇したが、意識障害軽度の改善のみであったため、精査・加療目的で入院した。患児は乳児血管腫に対してプロプラノロール塩酸塩(ヘマンジオル®)内服中であった。血中insulin値は低値であり、静脈血ガス分析では代謝性アシドーシスを認め、血糖値は測定感度以下であった。けいれん精査では異常を認めず、代謝異常症検索でも特定の疾患を示唆する所見を認めなかった。以上より、プロプラノロール塩酸塩内服が重症低血糖、および続発するけいれん発作の契機になったと考えられた。グルコース静注による血糖管理を行い、補液終了後も低血糖、けいれんの発症はなく入院7日目に退院となった。

監修者コメント

乳児血管腫に対するプロプラノロール塩酸塩内服療法中に低血糖によるけいれん重積をきたした1例である。プロプラノロール塩酸塩は非選択的β遮断薬であり、副作用として、低血糖・低血圧・徐脈・呼吸障害などが報告されているが、本症例のような重症低血糖によるけいれん発作は稀である。本症例における重症低血糖およびけいれん発作の原因としては、患児が離乳を完了したばかりであり、絶食時間が長時間に及んでいたことが関与していると考えられる。低血糖の遷延は重篤な神経学的後遺症を残す可能性があるため、低血糖によるけいれん発作を疑った際には、グルコース補充を含めた迅速な対応が必要である。

著者(発表者)
伊藤啓太ほか
所属施設名
名寄市立総合病院小児科
表題(演題)
プロプラノロール塩酸塩内服中に低血糖によるけいれん重積を来した1例
雑誌名(学会名)
小児科臨床 73(8) 1169-1171 (2020.8)

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