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アルテプラーゼによる副腎出血

2020年11月掲載

薬剤 アルテプラーゼその他の代謝性医薬品
副作用 副腎出血
概要 71歳、女性。急速に発症した右片麻痺症状で当院へ救急搬送され入院となった。脳梗塞が疑われアルテプラーゼ1950万単位が投与されたが、進行性の四肢麻痺となり呼吸状態も悪化し気管内挿管となった。頚髄硬膜外血腫と判明し、血腫除去・椎弓切除術が施行され麻痺は軽快傾向となった。第7病日に発熱を生じ、第8病日には腹痛・背部痛・嘔吐が出現、この時点の腹部CTでは異常を指摘できず、原因は不明であった。しかし、第11病日の腹部CTにて両側副腎の明らかな腫大を認め、両側副腎出血と考えた。明らかな副腎不全を認め、ヒドロコルチゾン静注を開始した。徐々に軽快し、ステロイドは減量、内服へ変更し第45病日にリハビリ転院となった。現在、当院外来通院中であり、腹部CT上副腎出血は徐々に吸収されつつあるが、発症1年近くたっても依然として副腎機能は低下状態にあり、ヒドロコルチゾン内服を継続中である。

監修者コメント

組織プラスミノゲン活性化因子(tissue plasminogen activator:t-PA)製剤であるアルテプラーゼは、血栓溶解薬として発症後4.5時間以内の脳梗塞や発症後6時間以内の急性心筋梗塞の治療に用いられている。本症例は当初脳梗塞が疑われ、アルテプラーゼが投与されたが、その副作用により両側副腎出血をきたした1例である。アルテプラーゼの投与により、重篤な出血が起こることがあるので、出血の早期発見に留意し、血液凝固能などの血液検査を頻回に行うことが重要である。本症例のような副腎出血をきたしたという報告はこれまでになく、貴重な症例といえる。

著者(発表者)
森尾比呂志ほか
所属施設名
成田赤十字病院総合内科ほか
表題(演題)
t-PA投与後に両側副腎出血をきたし副腎不全に至った一例
雑誌名(学会名)
日本内分泌学会雑誌96(1) 373 (2020.8)
第93回 日本内分泌学会学術総会(2020.6.4-6)

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