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バリウムによる結腸穿孔、腸管気腫

2020年11月掲載

薬剤 バリウム診断用薬(体外診断用医薬品を除く)
副作用 結腸穿孔、腸管気腫
概要 52歳、女性。生来健康で内服薬もなし。検診でバリウムによる上部消化管造影検査を受けた。検査の2日後に持続的な左下腹部痛と嘔吐を認め、救急車で搬送となった。
腹部単純X線検査・CT検査では下行結腸内に遺残するバリウム塊と腸管壁内の気腫像を認めたが、free airや腸閉塞像、液体貯留などの明らかな腹膜炎の所見はなく、確定診断のため審査腹腔鏡による腹腔内観察を行った。下行結腸周囲では混濁した血性腹水の貯留と結腸壁漿膜下の広範な気腫像を認め、バリウム塊による結腸穿孔の診断で開腹移行とした。上腹部正中切開で開腹したところ、下行結腸の変色・壊死を認め、腸管越しに鶏卵大のバリウム塊を触れた。後腹膜から下行結腸を授動するとバリウム塊を内包する結腸背側の腸管壊死を認め、後腹膜へ穿通していた。下行結腸を切除しHartmann手術を施行した。術後は遺残したバリウムの漏出による腹腔内膿瘍を認めたが保存的に軽快し、術後第58病日に退院となった。

監修者コメント

検診でのバリウムによる上部消化管検査後に腸管気腫像を呈し、審査腹腔鏡により結腸穿孔と診断された1例である。腸管気腫とは、腸管壁内に多数の含気性嚢胞が形成される病態である。腸管気腫像はこれまで腸管壊死を示す所見とされていたが、経過観察で改善する良性気腫も多く報告されている。本症例もCTにて腸管気腫像を認め、消化管穿孔を疑ったものの、確定診断に至らず、審査腹腔鏡によってバリウム塊による結腸穿孔と診断された。バリウム塊による大腸穿孔では、バリウムによる異物反応により強い腹膜炎が惹起され、通常の消化管穿孔に比べ予後不良とされている。本症例のように、確定診断に至らない場合には、早期診断のために審査腹腔鏡を積極的に行うべきである。

著者(発表者)
古屋怜慈ほか
所属施設名
順天堂大学医学部附属練馬病院総合外科
表題(演題)
腸管気腫を呈し審査腹腔鏡が有用であったバリウム塊による結腸穿孔の1例
雑誌名(学会名)
消化器外科43(8) 1287-1290 (2020.7)

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