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トスフロキサシントシル酸塩水和物による腎性尿崩症

2020年11月掲載

薬剤 トスフロキサシントシル酸塩水和物化学療法剤
副作用 腎性尿崩症
概要 6歳6ヵ月、男児。発熱・感冒症状を認め、5日間の抗生剤・感冒薬の内服後も症状が続き、トスフロキサシントシル酸塩水和物(TFLX)の処方を受けた。内服直後より多飲多尿・夜尿を認めた。4日間内服後の尿検査異常やその他の要因なく、紹介受診となった。
尿比重・尿浸透圧は保たれており、尿中Ca低下も認めず、糖尿病を疑う所見なし。血液検査は、血清浸透圧282mOsm/kgの時にADH 12.0 pg/mLと高値を認めた。尿崩症を疑い、TFLX内服終了を指示し帰宅とした。TFLX内服中止後5日目に排尿回数が正常化し、夜尿も認めなくなった。来院17日後に採血を行い、血清浸透圧285mOsm/kgの時にADH 7.1 pg/mLと血清ADH値の低下を認めた。来院48日後に再評価したが、多飲多尿を認めず血清浸透圧・ADHは正常であり、TFLX内服による一過性薬剤性腎性尿崩症と診断した。

監修者コメント

ニューキノロン系経口抗菌製剤であるTFLXは、各種感染症に対する治療薬として、日常診療においても頻繁に使用されている。本文献では、TFLXの内服により、一過性腎性尿崩症を発症した6歳男児の1例を報告している。本薬剤の添付文書にも、重大な副作用として腎性尿崩症が記載されている。稀ではあるが、本薬剤の投与中に多飲・多尿などの症状を認めた際には、腎性尿崩症を疑い、投与を中止するなど適切な処置を行う必要がある。

著者(発表者)
齊木玲央ほか
所属施設名
久留米大学医学部小児科学教室ほか
表題(演題)
トスフロキサシン内服で一過性腎性尿崩症を来した6歳6か月児
雑誌名(学会名)
日本内分泌学会雑誌96(1) 359 (2020.8)
第93回 日本内分泌学会学術総会(2020.6.4-6)

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