リファンピシンによるマクロファージ活性化症候群
2020年10月掲載
薬剤 | リファンピシン抗生物質製剤 |
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副作用 | マクロファージ活性化症候群 |
概要 | 1歳3ヵ月、男児。既往に難治性肛門周囲膿瘍と鼠径部リンパ節炎があり、他院で加療中であったが、今回発熱、咳嗽を認め細菌性肺炎の診断で入院した。精査の結果、起因菌としてMRSAが検出され、それに加えてBCGリンパ節炎も疑われたため、基礎疾患として慢性肉芽腫症(CGD)が強く疑われた。複数の抗菌薬加療で肺炎は軽快傾向にあったが、BCG感染症に対して抗結核薬のイソニアジド(INH)、リファンピシン(RFP)の内服を開始したところ、再発熱を認めた。高フェリチン血症、AST上昇、トリグリセリド上昇、低フィブリノーゲン血症を呈しマクロファージ活性化症候群(MAS)と診断した。被疑薬であるINH・RFPを中止し、プレドニゾロンを開始した上で、CGD、MASの加療目的で高次医療機関へ転院した。転院後は解熱を認め、血液検査所見も改善したためステロイドの継続は行わなかった。RFPおよびINHに対するDLSTはRFPのみ基準以上であったため、INHの再開を行ったが、MAS再燃は認めなかったことからRFPによるMASと判断した。 |
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本症例は、CGDと診断された男児に対して、BCG感染症治療のために投与されたRFPに関連してMASを発症した1例である。CGDは活性酸素産生障害を呈する食細胞機能異常症であり、乳幼児期からの易感染性と、過剰炎症の結果としての肉芽腫形成を特徴としている。一方で、MASは、主にリウマチ性疾患においてサイトカインの過剰な産生による組織球の増殖・活性化からマクロファージの活性化が持続する状態で、血球貪食性リンパ組織球症を発症し、様々な臨床症状を呈する。CGDにMASを合併した報告はいくつか散見されるが、詳しい発症メカニズムは明らかにされていない。ほとんどは細菌などの感染が誘因と考えられており、薬剤投与を契機にMASを発症した報告はこれまでになく、稀な症例といえる。
- 著者(発表者)
- 大原智子ほか
- 所属施設名
- 東京北医療センター小児科ほか
- 表題(演題)
- リファンピシン投与に関連してマクロファージ活性化症候群を合併した慢性肉芽腫症
- 雑誌名(学会名)
- 日本小児科学会雑誌 124(5) 838-844 (2020.5)
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