アモキサピンによる肺障害
2020年10月掲載
薬剤 | アモキサピン中枢神経用薬 |
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副作用 | 肺障害 |
概要 | 72歳、女性。身体科的、精神科既往歴はなし。X年9月より不眠、食欲不振、抑うつ気分、意欲低下などが見られるようになった。同年11月中旬かかりつけ医を受診したところ低ナトリウム血症を指摘され、総合診療科に紹介となった。低ナトリウム血症は補液や食事摂取によって改善したが、同年12月初旬焦燥感が強く、抑うつ気分や意欲の低下、妄想および希死念慮が見られたため、うつ病の治療目的に精神科転科、医療保護入院となった。 12月初旬アモキサピンを50mg/日から開始し、段階的に増量し150mg/日とした。それに伴い抑うつ症状は改善が見られたが、X+1年1月初旬から発熱を認め、咳嗽や炎症反応上昇が続いた。CTで両側下肺野を中心とした間質性の異常陰影があり、薬剤性肺障害(以後DILD)が疑われた。総合診療科の病棟へ転棟となり、アモキサピンを75mg/日へ減量した。同日から3日間ステロイドミニパルス療法を行い、炎症反応やバイタルサインは改善した。1月中旬に再び精神科病棟へ転棟の後、アモキサピンを漸減中止しベンラファキシンに置換した。その後うつ状態の増悪やDILDの再発もなく、発熱出現後約1ヵ月で退院した。 |
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本症例は、三環系抗うつ薬であるアモキサピンの投与により、DILDを発症した重症うつ病の1例である。DLIDは抗悪性腫瘍薬、関節リウマチ治療薬、免疫抑制剤、漢方薬などでの報告が多く、向精神病薬に関しては比較的少ないが、アモキサピンを含む三環系抗うつ薬を中心に報告が散見される。今後もうつ病患者の増加とともに三環系抗うつ薬が処方される機会も増えることが予想される。三環系抗うつ薬の投与中に発熱や咳嗽などの呼吸器症状が認められた場合には、DLIDも考慮し、薬剤を中止の上、適切な処置を行うことが重要である。
- 著者(発表者)
- 三宅通ほか
- 所属施設名
- 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科精神神経学ほか
- 表題(演題)
- Amoxapineによる薬剤性肺障害が疑われた重症うつ病の1例
- 雑誌名(学会名)
- 長崎医学会雑誌95(1) 52-56+9 (2020.6)
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