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ペムブロリズマブ、アテゾリズマブによる肝機能障害

2020年9月掲載

薬剤 ペムブロリズマブ腫瘍用薬
アテゾリズマブ腫瘍用薬
副作用 肝機能障害
概要 59歳、男性。原発性肺癌・多発脳転移に対して2018年12月よりペムブロリズマブを開始した。2コース目終了時に著明な黄疸、肝機能障害を認め当科紹介となった。血液検査、腹部超音波検査、腹部造影CT検査や肝生検などから、ペムブロリズマブの免疫関連有害事象(irAE)と診断した。ペムブロリズマブは中止し、プレドニゾロン(PSL)を開始したが肝機能の改善は得られず、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)の併用を開始したところ、緩徐に肝機能の改善を認めた。肺癌に対しては2次治療では原発巣の増大傾向を認めたため、3次治療としてアテゾリズマブを開始した。しかし再び肝機能障害を認め、肝生検の結果アテゾリズマブのirAEと診断した。PSLを開始したが減量中に肝機能障害の再増悪を認めたため、MMFを開始した。その後は肝機能障害の持続的な改善を認め、現在は外来でPSLの減量を継続している。

監修者コメント

免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor: ICI)は、肺癌など様々な癌種で有効性が示されているが、一方で特徴的な有害事象としてirAEが報告されている。本症例は、抗PD-1抗体のペムブロリズマブによるirAE既往症例に抗PD-L1抗体のアテゾリズマブを投与し、肝機能障害が再発した稀な1例である。自己免疫疾患の既往はICI関連irAEのリスク因子であり、慎重投与が必要であるが、本症例のように、ICI関連irAEの既往症例に異なるICIを投与することがirAE発症のリスクとなるかどうかは明確ではなく、今後の症例の蓄積が必要である。

著者(発表者)
山内亮平ほか
所属施設名
関西労災病院消化器内科
表題(演題)
抗PD-1抗体(Pembrolizumab)による肝機能障害を認めた症例に、PD-L1抗体(Atezolizumab)を投与し肝機能障害が再発した稀な1例
雑誌名(学会名)
肝臓(第56回 日本肝臓学会総会) 61(S-1) A276 (2020.4)

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