ワルファリンによる皮膚壊死
2020年8月掲載
薬剤 | ワルファリン血液・体液用薬 |
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副作用 | 皮膚壊死 |
概要 | 63歳、女性。脳梗塞を契機に先天性プロテインC欠乏症と診断され入居施設の管理下でワルファリン4.5mg内服中であった。高熱と四肢の疼痛があり、抗菌薬を投与され経過を見ていたが、四肢に疼痛を伴う紫斑が出現し急速に増悪したため当院皮膚科へ救急搬送された。既往に先天性プロテインC欠乏症があり、ワルファリン投与により元々低下していたプロテインC活性が感染症を契機にさらに減少し、ワルファリンによる抗凝固作用を超えて凝固に傾いてしまったことでワルファリン誘発性皮膚壊死(WISN)を発症したと考えた。 本症例は当初DICへの進行を予測し、ワルファリンを中止し、ヘパリンへ切り替えた。搬入時の段階では壊死性筋膜炎も否定できず、検査前からメロペネム水和物0.5gの点滴を開始した。その後、全身状態は安定したため、抗菌薬を中止した。数回の外科的処置を行い、患肢は切断を免れ治癒した。第18病日目にはワルファリンの内服を少量より再開し、紫斑の再燃がないことを確認しながらワルファリンを漸増した。現在まで症状の再燃なく内服を継続している。 |
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WISNはワルファリン内服による稀な副作用の1つであり、典型例では内服開始数日以内に有痛性の紫斑が出現し、急速に境界明瞭な黒色壊死に進行する。本症例は内服数年を経過してから、感染を契機に発症した遅発性のWISNの1例である。本症例のようにプロテインC欠乏症などの凝固異常疾患を持つ患者では、ワルファリン内服開始から長期間経過していても、皮膚壊死をきたすことがあり、ワルファリン内服中の患者で急速に発症、進行する紫斑が認められた場合には、WISNも考慮し、迅速な診断、治療を行うことが重要である。
- 著者(発表者)
- 菅野莉英ほか
- 所属施設名
- 砂川市立病院皮膚科ほか
- 表題(演題)
- 先天性プロテインC欠乏症に合併したワルファリン誘発性皮膚壊死と考えた1例
- 雑誌名(学会名)
- 臨床皮膚科 74(3) 259-264 (2020.3)
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