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アテゾリズマブによる自己免疫性脳炎

2020年8月掲載

薬剤 アテゾリズマブ腫瘍用薬
副作用 自己免疫性脳炎
概要 60歳代、女性。当院呼吸器内科を受診し、肺腺がん、肺、脳転移と診断された。3年間で、ガンマナイフを用いた定位放射線治療と3次治療までの化学療法を施行され、今回4次治療としてアテゾリズマブ単剤治療(1,200mg/body)を開始した。Day8に発熱(Grade1)があり感冒が疑われロキソプロフェンが処方されたが、Day13より発熱に加え口渇(Grade1)が出現し、Day15に緊急来院された。免疫関連有害事象(irAE)を疑う所見は認められず、尿路感染症を疑いレボフロキサシンが処方され帰宅となった。Day16より食欲不振(Grade3)、嘔吐(Grade1)の報告があり、重篤なirAEの可能性を検討した。Day17の日中より意識レベルの低下を認めた。アテゾリズマブ投与中に急激に発症した意識障害であったため、感染性の脳炎や髄膜炎の影響よりも、アテゾリズマブによる自己免疫性脳炎の可能性が高いと考えられた。そこで、ステロイドパルスを開始したところ発熱、意識レベルは改善し、ステロイド減量後も症状の再燃はなく、独歩で退院となった。

監修者コメント

免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor: ICI)は、肺癌など様々な癌種で有効性が示されているが、一方で特徴的な有害事象としてirAEが報告されている。本症例では、肺癌に対する抗PD-L1抗体薬アテゾリズマブの投与により、自己免疫性脳炎を発症したが、ウェブアプリを用いた患者の自発的な報告によって、irAEの早期発見につながった。近年、ICIを投与する患者は増加しているが、ウェブアプリを用いた患者の主観的評価の確認は、irAEの早期発見に有効である可能性があり、今後の更なる検証が必要である。

著者(発表者)
桂英之ほか
所属施設名
国民健康保険小松市民病院薬剤科ほか
表題(演題)
ウェブアプリケーションを契機に発見されたアテゾリズマブ単剤による自己免疫性脳炎の1例
雑誌名(学会名)
日本病院薬剤師会雑誌56(4) 389-394 (2020.4)

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