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23価肺炎球菌多糖体ワクチンによる関節リウマチ

2020年8月掲載

薬剤 23価肺炎球菌多糖体ワクチン生物学的製剤
副作用 関節リウマチ
概要 72歳、男性。1ヵ月前に前医で23価肺炎球菌多糖体ワクチン(PPSV23)の接種を左上腕外側に受け、翌日に接種部位の腫脹と両股関節痛を生じた。翌々日に近医整形外科にて炎症所見を指摘されたが、リウマチ因子は陰性であった。接種5日後に両肩関節と両膝痛を自覚し、次第にベッドからの起き上がりが困難となった。接種2週後に左手関節の痛みと腫れを生じ、当院内科を紹介受診し、ロキソプロフェンを処方されたが改善せず、当院リウマチ専門外来を受診した。左手及び両足の浮腫と手足小関節で多くの圧痛関節を認め、リウマチ因子は弱陽性ながら陽転化していた。これらの点と、ワクチン接種から発症までの時間が近接している点から、PPSV23による急性発症の関節リウマチと診断した。
プレドニゾロン(PSL)15mg/日による内服治療により病勢は低減した。残存腫脹に対しメトトレキサート(MTX)8mg/週の併用を開始し、なおも関節腫脹が残存したためスルファサラジン(SSZ)1000mg/日も併用しながらPSLは漸減中止した。経過中非結核性抗酸菌症が疑われたが、MTXとSSZにより関節リウマチの臨床的寛解は維持され、受診3年後に近医へ転院した。

監修者コメント

肺炎球菌ワクチンは65歳以上の高齢者に対して予防接種が行われており、肺炎予防において重要な役割を果たしている。本症例は、肺炎球菌ワクチン(PPSV23)の接種後に発症した関節リウマチの1例である。肺炎球菌ワクチン接種後に単関節炎や全身性炎症反応を生じたとする報告は散見されるが、本症例のような多関節炎の報告は稀である。超高齢社会を迎えた我が国において、今後も肺炎球菌ワクチンを接種する機会は増加することが予想される。ワクチン接種後に多関節痛などの症状を認めた場合には、関節リウマチの可能性も考慮し、適切な検査や治療を行う必要がある。

著者(発表者)
長尾菜摘ほか
所属施設名
自治医科大学附属さいたま医療センターリウマチ膠原病科ほか
表題(演題)
23価肺炎球菌多糖体ワクチン(PPSV23)接種後に発症した関節リウマチ
雑誌名(学会名)
自治医科大学紀要42 35-40 (2019)

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