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L-アスパラギナーゼによる急性膵炎、糖尿病

2020年8月掲載

薬剤 L-アスパラギナーゼ腫瘍用薬
副作用 急性膵炎、糖尿病
概要 17歳、男性。14歳時に急性リンパ性白血病と診断され、L-アスパラギナーゼ(L-asp)を含む寛解導入療法にて寛解した。再寛解導入療法でL-aspを2回投与された直後に急性膵炎を発症し、人工透析と人工呼吸器管理を施行された。発症1ヵ月後の腹部CTでは巨大な膵仮性嚢胞を認め、その後も残存していた。
膵炎治癒から約1年半後に、多飲傾向と体重減少を認めた。インスリン分泌低下を伴う糖尿病の診断で、インスリン頻回注射療法を開始した。改善を認めたが、その後発症した二次性急性骨髄性白血病に対する臍帯血移植におけるステロイドや免疫抑制薬の使用に伴い、インスリン必要量が増減した。現在は内服薬にて加療中である。現在に至るまで、膵仮性嚢胞の大きさに変化を認めていない。

監修者コメント

L-aspは小児の急性リンパ性白血病の治療において中心的な役割を果たしている薬剤の1つであるが、高血糖や急性膵炎などの様々な副作用が報告されている。本症例における糖尿病の主な病態は、膵傷害によるインスリン分泌能の低下と考えられるが、ステロイド治療薬の影響なども関与していたと考えられる。急性リンパ性白血病の治療成績の向上に伴い、化学療法に関連する晩期合併症は新たな課題になっている。L-asp関連急性膵炎を発症した際は、糖尿病発症の可能性を念頭におき、慎重な経過観察が必要である。

著者(発表者)
佐野仁美ほか
所属施設名
市立札幌病院小児科ほか
表題(演題)
小児急性リンパ性白血病の治療に伴うL-アスパラギナーゼ関連急性膵炎後に発症した糖尿病の1例
雑誌名(学会名)
臨床小児医学 67(1-6) 73-77 (2019)

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