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リバスチグミンによるDrop Head Syndrome

2020年7月掲載

薬剤 リバスチグミン中枢神経用薬
副作用 Drop Head Syndrome
概要 79歳、女性。物忘れを訴えて受診したが、パーキンソン症状を認めず、脳血流シンチグラフィーを含む検査の結果、アルツハイマー型認知症(DAT)と診断した。ドネペジル塩酸塩は嘔気、嘔吐のため服用できず、リバスチグミン経皮吸収型製剤を9mg/日から開始した。1ヵ月後、13.5mg/日に増量したところで家人が手の震えに気づいた。さらに1ヵ月後の診察時には、姿勢がやや前屈し、表情が若干乏しくなっていた。リバスチグミンを18mg/日に増量したところでdrop head syndrome(DHS)、手指振戦、小刻み歩行などが出現し、ドパミントランスポーターシンチグラフィー(DATシンチ)では両側基底核で集積低下認めた。リバスチグミンを減量し、L-ドパ製剤であるネオドパストン®Lを処方したところ、DHSなどの症状は消失した。DHS、振戦、DATシンチの所見などからレビー小体型認知症(DLB)に診断が変更となった。

監修者コメント

DLBは進行性の認知機能低下とともに、中核的特徴の1つとして特発性パーキンソニズムが認められる疾患である。本症例は、当初DATと診断されたものの、リバスチグミンの投与によりDHSなどのパーキンソン症状が出現したため、DATシンチの結果などにより、最終的にDLBに診断が変更になった興味深い1例である。本症例のように、当初はパーキンソン症状を認めずDATと診断され、リバスチグミンが投与されるケースも多いことが予想される。DATと診断された症例においても、DLBが含まれている可能性があり、診断後も慎重な経過観察やDATシンチの適正な実施などが必要である。

著者(発表者)
前田潔ほか
所属施設名
神戸百年記念病院認知症センターほか
表題(演題)
リバスチグミン投与によりdrop head syndromeをきたした一症例 ―当初,アルツハイマー型認知症とされ,のちにレビー小体型認知症と診断変更された症例―
雑誌名(学会名)
老年精神医学雑誌 31(1) 59-65 (2020.1)

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