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市販のアスピリンによるサリチル酸中毒、尿細管障害

2020年7月掲載

薬剤 アスピリン(市販)一般用医薬品
副作用 サリチル酸中毒、尿細管障害
概要 21歳、女性。自殺目的に市販のアスピリン(330 mg/錠)80錠を内服した。来院時、意識清明でバイタルサインも安定していたが、嘔気・嘔吐の症状を訴えていた。入院後に体温が急上昇して39℃に達していたこと、代謝性アシドーシス、呼吸性アルカローシスといった臨床症状を認めたことから、血中濃度は中毒域に達していると推定されたため、持続血液透析濾過(CHDF)を導入することとなった。中毒症状は改善し、CHDFは34時間で離脱した。早期に血液透析を導入したため輸液負荷、重炭酸ナトリウムの投与は行わず、全身状態が安定した第4病日に輸液を終了していた。しかし、第6病日に再び嘔気を訴えた。動脈血液ガス分析ではanion gap非開大性代謝性アシドーシスを認めた。腎機能障害も認めたが、輸液終了後も十分な尿量を得られていたことから、脱水ではなくnon-steroidal anti-inflammatory drugsによる輸入細動脈の拡張不全が原因と考えられた。
代謝性アシドーシスに対し重炭酸ナトリウムの持続静注を300 mmoL/dayで開始し、アシドーシスの補正を第12病日まで継続した。重炭酸ナトリウム投与中止後も代謝性アシドーシスの進行を認めず、腎機能も改善し、第30病日に軽快退院となった。

監修者コメント

本症例は、自殺目的で大量内服したアスピリンによるサリチル酸中毒の1例である。血液透析の導入により、症状は早期に改善したが、経過中に腎機能障害を認めており、尿細管障害と診断されている。尿細管障害は様々な薬剤、感染症、血液疾患などで発症することが報告されており、NSAIDsも原因薬剤の1つである。その機序としては、プロスタグランジンの抑制による腎血流の低下が考えられている。本症例のようなアスピリン大量内服に対しては、中毒症状改善後も尿細管障害の合併に注意すべきである。

著者(発表者)
曽我部拓ほか
所属施設名
国立病院機構大阪医療センター救命救急センターほか
表題(演題)
尿細管障害を合併したサリチル酸中毒の1例
雑誌名(学会名)
日本集中治療医学会雑誌 27(2) 121-122 (2020.3)
第1回 日本集中治療医学会関西支部学術集会 (2017)

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