ラモトリギンによる中毒性表皮壊死症
2020年7月掲載
薬剤 | ラモトリギン中枢神経用薬 |
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副作用 | 中毒性表皮壊死症 |
概要 | 33歳、男性。うつ病と診断され、バルプロ酸ナトリウム、オランザピン内服にて加療されていた。ラモトリギン25 mgが隔日で追加投与された23日後に、頸部に紅斑が出現し、その翌日から発熱、全身の紅斑、背部のびらんが出現した。粘膜疹と肝機能障害も伴い、表皮剥離が体表面積の約40%を占めていたこと、病理組織像にて真皮の細胞浸潤が乏しく、表皮の多発性個細胞壊死と全層性壊死がみられたことから、ラモトリギンによる中毒性表皮壊死症と診断された。 入院後1病日よりラモトリギンとバルプロ酸ナトリウムの内服を中止し、プレドニゾロン内服と免疫グロブリン大量静注療法を開始した。肝機能障害に対してウルソデオキシコール酸の内服を行い、症状の改善が認められた。しかし、7病日から体幹に黄疸が出現し、皮疹軽快後も肝機能障害が遷延したため、ベザフィブラート 400 mg/日の内服が追加された。106病日に退院したものの、肝機能障害の加療を継続し、治癒までに約1年10ヵ月を要した。 |
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抗てんかん薬であるラモトリギンは、てんかんや双極性障害の治療に用いられている。本症例は、うつ病に対してバルプロ酸ナトリウムとオランザピンを投与中にラモトリギンを追加投与したところ、重症薬疹である中毒性表皮壊死症(TEN)と遷延性の肝機能障害を認めた1例である。肝機能障害遷延の原因としては、胆管消失症候群の併発が考えられている。ラモトリギンとバルプロ酸の併用例では、ラモトリギンの血中濃度の上昇により、皮膚障害や肝機能障害の副作用リスクが高くなるため、十分な注意が必要である。
- 著者(発表者)
- 新田悠介ほか
- 所属施設名
- 秋田大学大学院医学系研究科皮膚科学・形成外科学講座ほか
- 表題(演題)
- 肝機能障害が遷延したラモトリギンによる中毒性表皮壊死症
- 雑誌名(学会名)
- 皮膚病診療 42(2) 144-147 (2020.2)
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