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オピオイドによるオッジ括約筋機能不全、急性胆管炎

2020年7月掲載

薬剤 オピオイドその他
オキシコドンアルカロイド系麻薬(天然麻薬)
副作用 オッジ括約筋機能不全、急性胆管炎
概要 75歳、女性。乳がん・腋窩リンパ節転移と診断され、乳房切除術を施行された。術後より発作的な下腹部痛が持続し、救急外来受診歴が複数回あった。オキシコドンの使用量は増加傾向にあり、乳がん診断時より11年後、オピオイド開始より8年後、オキシコドン徐放製剤を40 mg/日、オキシコドン速放製剤5 mgを10回/日程度服用していた。また、発症1ヵ月前より誘因なく右背部痛、右季助部痛も出現し、腹部CT検査にて総胆管・膵管の拡張、血液生化学検査では炎症反応高値かつ肝胆道系酵素・肝逸脱酵素の上昇を認め、急性胆管炎として抗菌薬による保存的加療を行った。
内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査では、腫瘤性病変を認めず、胆管内へのカテーテル挿入困難もあり、オッジ括約筋機能不全を疑う所見であった。そのため、内視鏡的十二指腸乳頭切開術を施行し、症状は改善した。しかし、下腹部痛は残存し、処置後8ヵ月で行った胆道シンチグラフィーでは軽度の胆管拡張・胆汁排泄遅延が認められたため、オッジ括約筋機能不全に伴う胆管括約筋機能不全と診断された。追加の内視鏡的十二指腸乳頭切開術を施行され、疼痛の改善が得られ、退院となった。

監修者コメント

オピオイド鎮痛薬はがん性疼痛や慢性疼痛の緩和を目的に広く使用されている。オピオイドの副作用として、悪心・嘔吐、便秘、眠気などの主要な副作用は良く知られているが、本文献では、稀な副作用として、オピオイド誘発性オッジ括約筋機能不全に伴う急性胆管炎を報告している。胆嚢摘出後の患者におけるオピオイドによる胆道内圧上昇や胆汁うっ滞については、これまでに示されているが、本症例のように胆嚢摘出を行っていない患者でのオピオイド誘発性オッジ括約筋機能不全に伴う急性胆管炎の報告はなく、極めて稀な症例といえる。オピオイドを使用している際に原因不明の季肋部痛、上腹部痛や急性胆管・胆嚢炎、膵炎などを認める場合には、オッジ括約筋機能不全も疑い、適切な対応を行う必要がある。

著者(発表者)
熊倉康友ほか
所属施設名
山梨大学医学部附属病院医療チームセンターほか
表題(演題)
原因不明の腹痛に対してオピオイド鎮痛薬を使用していた乳がん患者において、オピオイド誘発性オッジ括約筋機能不全に伴う急性胆管炎を発症した1症例
雑誌名(学会名)
Palliative Care Research 15(1) 29-33 (2020.2)

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