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メトロニダゾールによる末梢神経障害

2020年6月掲載

薬剤 メトロニダゾール寄生動物用薬
副作用 末梢神経障害
概要 76歳、男性。粘血便を主訴に受診し、下部消化管内視鏡検査および便汁鏡検でアメーバ性大腸炎と診断した。メトロニダゾール(MNZ)500mgの8時間ごとの静注投与が開始された。開始24時間後より手袋靴下型の感覚低下、異常感覚が出現し、投与開始2日後からは足部に灼熱感を伴う疼痛が出現した。同薬中止により徐々に症状は改善し3ヵ月後には完全に消失した。MNZ以外で入院後から神経症状発症までに投与した薬剤はアセトアミノフェンのみであり末梢神経障害の原因とは考えにくく、またMNZ投薬中止により症状が改善したことから他疾患による末梢神経障害の可能性は低く、MNZによる末梢神経障害と診断した。

監修者コメント

メトロニダゾールは、アメーバ赤痢などの原虫感染症の治療や、ヘリコバクター・ピロリの二次除菌治療などに用いられている。本症例は、アメーバ性大腸炎に対してメトロニダゾールの静注を開始したところ、早期に末梢神経障害が出現した1例である。本薬剤の一般的な副作用は、頭痛、嘔気、腹痛などであり、長期間服用すると、末梢神経障害が起こることが報告されているが、本症例のように静注開始後早期に末梢神経障害が出現することは稀である。短期投与であっても、末梢神経障害が出現する可能性があるため、本薬剤の投与後に四肢のしびれや異常感覚などが認められた場合には、投与を中止し、適切な処置を行うことが重要である。

著者(発表者)
大阿久達郎ほか
所属施設名
パナソニック健康保険組合松下記念病院消化器内科
表題(演題)
アメーバ性大腸炎に対するメトロニダゾール静注開始後早期に末梢神経障害が出現した1例
雑誌名(学会名)
日本消化器病学会雑誌117(1) 72-77 (2020.1)

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