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スニチニブによる潰瘍性大腸炎再燃

2020年6月掲載

薬剤 スニチニブ腫瘍用薬
副作用 潰瘍性大腸炎再燃
概要 60歳、男性。既往に潰瘍性大腸炎があり、詳細は不明だが長期間無投薬で寛解状態を維持していた。右腎癌に対して用手補助下腹腔鏡右腎摘出術を施行後、術後化学療法としてスニチニブ投与を開始され、4コース目に下痢・倦怠感を認めた。当初は感染性腸炎が疑われたが、絶食加療下で下痢の回数は改善傾向を認めたものの、炎症反応高値が持続し、貧血の進行と便潜血陽性を認めたため、下部消化管内視鏡検査を施行したところ、横行結腸と直腸に筋層にまで達する深い潰瘍を認めた。潰瘍性大腸炎の再燃を疑い、メチルプレドニゾロンコハク酸エステルナトリウム点滴静注を開始したところ改善を認めたため、プレドニゾロン点滴静注に変更し漸減、成分栄養剤の内服を開始したが、下痢、炎症反応の悪化を認めたため、成分栄養剤の内服を中止した。腎癌の既往があり生物学的製剤の使用が困難なため、腹腔鏡下大腸全摘術、人工肛門増設術を施行した。手術標本の病理検査では潰瘍性大腸炎に矛盾しない所見であった。

監修者コメント

スニチニブは血管新生に関与するVEGF(血管内皮細胞増殖因子)受容体や腫瘍増殖に関与するPDGF(血小板由来増殖因子)受容体など複数の受容体を標的とした分子標的薬であり、消化管間質腫瘍(GIST)や腎臓癌などの治療薬として使用されている。本症例は腎臓癌に対するスニチニブの投与により、寛解状態を維持していた潰瘍性大腸炎が再燃した1例である。稀な有害事象ではあるが、本薬剤を炎症性腸疾患の患者に投与する際には、再燃する可能性も考慮し、慎重な経過観察が必要である。

著者(発表者)
山本一輝ほか
所属施設名
大阪市立大学医学部附属病院消化器内科
表題(演題)
分子標的薬スニチニブ投与を契機に潰瘍性大腸炎の再燃を来した一例
雑誌名(学会名)
第103回 日本消化器内視鏡学会近畿支部例会 プログラム・抄録集 82 (2020)
第103回 日本消化器内視鏡学会近畿支部例会 (2020.1.18)

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