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アテゾリズマブによる急性1型糖尿病

2020年6月掲載

薬剤 アテゾリズマブ腫瘍用薬
副作用 急性1型糖尿病
概要 66歳、男性。10年前に2型糖尿病と診断され、7年前よりインスリン治療が開始された。経過中に右下肺原発扁平上皮癌stage III Aと診断され、二次治療としてアテゾリズマブ1200 mg/3週を1年前から開始した。また、開始時にHbA1c 7.8%であったため、テネリグリプチン20 mg/日、ボグリボース0.3 mg/日、インスリンデグルデグ・アスパルト配合注/朝夕食前による加療も継続された。その数ヵ月後、外来受診時にHbA1c 10.0%、随時血糖361 mg/dL、CPR 0.2 ng/dLと血糖コントロールの急激な増悪と内因性インスリン分泌の急激な低下がみられ、アテゾリズマブによる免疫関連有害事象である1型糖尿病の発症を疑い、インスリンリスプロとインスリンデグルデグによるインスリン頻回注射に変更した。また、抗GAD抗体44.8 U/mL、抗IA-2抗体>30.0 U/mLと2抗体陽性であった。HLA遺伝子型DRB1*01:01/09:01、DQB1*05:01/03:03と1型糖尿病感受性を有していた。抗ZnT8抗体は陰性であった。以上より、インスリン使用中の2型糖尿病患者に合併した1型糖尿病と診断した。

監修者コメント

抗PD-L1モノクローナル抗体であるアテゾリズマブは、免疫チェックポイント阻害薬の1つであり、肺癌や乳癌の治療に用いられている。免疫チェックポイント阻害薬の副作用に免疫関連有害事象(irAE)があるが、本症例は、アテゾリズマブ投与中にirAEである1型糖尿病を発症した1例である。本症例では、膵島関連自己抗体として、抗GAD抗体と抗IA-2抗体の2抗体が陽性であり、極めて稀な症例といえる。免疫チェックポイント阻害薬を投与する症例は今後も増加することが予想され、1型糖尿病を含めたirAEの発症にも十分に注意すべきである。

著者(発表者)
四方雅隆ほか
所属施設名
富山大学第一内科ほか
表題(演題)
アテゾリズマブ使用中に発症した複数の膵島関連自己抗体を有する急性発症1型糖尿病の1例
雑誌名(学会名)
糖尿病 63(2) 77 (2020.2)
第93回 日本糖尿病学会中部地方会 (2019.9.7-8)

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