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免疫グロブリンによる血小板減少

2020年5月掲載

薬剤 免疫グロブリン生物学的製剤
副作用 血小板減少
概要 69歳、男性。類天疱瘡に対しプレドニゾロンを開始後、右手掌、左上肢の異常感覚、および両下肢筋力低下を認め入院した。腰部MRIでは馬尾神経根の腫大を認め、電気生理学的検査から慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー(CIDP)と診断し、ヒト免疫グロブリンGによる免疫グロブリン大量療法(IVIG)を2回施行した。治療により症状は緩徐に改善した。しかし各治療後に、血小板減少を認め、2回目のIVIG後には透析時の止血困難を認めた。いずれも開始の約2日目から始まり、約10日から14日で最低値に達し、終了後10日から15日より自然に改善し始めた。

監修者コメント

本症例は類天疱瘡の発症と同時期にCIDPと診断され、IVIGを施行したところ血小板減少を認めた1例である。IVIGの血球系の副作用として、溶血性貧血、白血球減少、血栓症などの報告があるが、本症例のような血小板減少は稀である。その機序として、IgG-血小板複合体や免疫細胞に発現している活性化したFcγ 受容体の関与が示唆されている。活性化したFcγ受容体は、類天疱瘡やCIDPなど炎症性疾患の病勢に関与することから、複数の自己免疫性の炎症性疾患の併存はIVIG による血小板減少のリスクとなる可能性があり、十分な注意が必要である。

著者(発表者)
佐藤健朗ほか
所属施設名
東京慈恵会医科大学神経内科
表題(演題)
慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチーに対し免疫グロブリン大量療法を施行し血小板減少を認めた1例
雑誌名(学会名)
臨床神経学 60(1) 57-59 (2020.1)
第227回 日本神経学会関東・甲信越地方会 (2018.12.1)

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