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アテゾリズマブによる血球貪食症候群

2020年5月掲載

薬剤 アテゾリズマブ腫瘍用薬
副作用 血球貪食症候群
概要 60歳代、男性。肺腺扁平上皮癌、肺葉切除術後の縦隔リンパ節転移の5次治療としてAtezolizumab(atezo)が開始された。atezo開始後10日目から38℃以上の発熱、炎症反応の上昇を認め入院となった。明らかな感染源なく各種培養実施の上、抗菌薬の経験的治療を行ったが、炎症反応の更なる上昇と血小板減少も認めた。CTで脾腫を認め、フェリチンおよび可溶性IL-2レセプター上昇から血球貪食症候群(hemophagocytic syndrome : HPS)を疑った。骨髄穿刺を行いマクロファージによる血球貪食像を認めた。以上よりHPSと診断した。HPSの原因には感染症、薬剤や自己免疫性疾患が挙げられるが、本症例はatezoの免疫関連有害事象(immune-related Adverse Events : irAE)と考えられた。プレドニゾロン投与を行い、発熱や血小板減少、高フェリチン血症は速やかに改善した。

監修者コメント

抗PD-L1ヒト化モノクローナル抗体であるアテゾリズマブは免疫チェックポイント阻害薬(immune checkpoint inhibitor: ICI)の1つであり、PD-L1とPD-1およびB7-1の結合を阻害することで、T細胞の抗腫瘍免疫応答を誘導する。ICIは肺癌など様々な癌種で有効性が示されているが、一方で特徴的な有害事象としてirAEが報告されている。本症例は、肺腺扁平上皮癌に対してアテゾリズマブを投与したところ、HPSを発症した1例である。ICIによるirAEとして様々な疾患が報告されているが、HPSは稀である。HPSは臓器不全を引き起こし致死的となりうる疾患であり、本薬剤を投与する際には、血液検査を含め慎重な経過観察が必要である。

著者(発表者)
大熊遼太朗ほか
所属施設名
昭和大学医学部内科学講座腫瘍内科学部門ほか
表題(演題)
Atezolizumab投与による血球貪食症候群を早期に診断しえた肺腺扁平上皮癌の一例
雑誌名(学会名)
第32回 日本バイオセラピィ学会学術集会総会 プログラム・抄録集 63 (2019)
第32回 日本バイオセラピィ学会学術集会総会 (2019.11.28-29)

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