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クリゾチニブによる胸水貯留

2020年4月掲載

薬剤 クリゾチニブ泌尿生殖器官及び肛門用薬
副作用 胸水貯留
概要 35歳、女性。ROS1陽性の4B期肺腺癌(左下葉原発、cT4N3M1c(PUL、LYM))と診断され、1次治療としてクリゾチニブが導入された。速やかに原発巣、縦隔リンパ節転移が縮小し、治療効果を得られていたが、治療4日目の胸部X線で右胸水貯留を認めた。右胸水は経時的に増加したが、胸部CTで明らかな右胸膜播種結節の新出は認めず、腫瘍マーカー上昇もなかった。右胸水の色調は淡黄色透明、性状はリンパ球優位の滲出性胸水で細胞診は陰性であった。治療41日目、好中球減少の発現を機にクリゾチニブを休薬したところ、2週間後に施行した胸部X線で右胸水は減少していた。休薬の継続によって右胸水は再貯留することなく経過したため、クリゾチニブによる有害事象と考えられた。その後、半年以上休薬したが、病勢の悪化なく経過した。

監修者コメント

チロシンキナーゼ阻害剤であるクリゾチニブは、ALK融合遺伝子陽性またはROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌に対する治療薬として使用されている。本文献では、ROS1陽性の肺腺癌に対してクリゾチニブを投与したところ、薬剤性胸水貯留を認めた症例を報告している。本薬剤の投与中に胸水貯留を認めた場合には、稀ではあるが薬剤性胸水貯留も考慮し、適切な対応を行うことが重要である。

著者(発表者)
田地広明ほか
所属施設名
株式会社日立製作所日立総合病院呼吸器内科ほか
表題(演題)
Crizotinibによる胸水貯留を認めたROS1陽性肺腺癌の1例
雑誌名(学会名)
肺癌 59(6) 809 (2019.11)
第60回 日本肺癌学会学術集会 (2019.12.6-8)

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