ブロダルマブ投与後の胸膜炎、大動脈炎
2020年4月掲載
薬剤 | ブロダルマブその他の代謝性医薬品 |
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副作用 | 胸膜炎、大動脈炎 |
概要 | 47歳、女性。9歳時より尋常性乾癬の既往があり現在は市販の保湿剤で症状をコントロールしていたが、初診2週間前より皮疹が増悪し当科受診となった。初診8日後より発熱、炎症反応上昇と皮疹の膿疱化をきたし、膿疱性乾癬を発症した。ブロダルマブ投与で皮膚症状は著明に改善するも、投与5日後に心窩部痛が出現し、白血球、好中球、CRPの著明な上昇を認めた。CT画像検査では胸膜に沿った浸潤影と大動脈壁肥厚がみられ、胸水穿刺の結果、無菌性のリンパ球性滲出性胸水と診断され、大動脈壁肥厚については大動脈炎の存在が疑われた。全身状態の急激な悪化のため、プレドニゾロン内服を開始したところ、白血球、CRP、胸膜肥厚、胸水、大動脈壁肥厚は速やかに改善傾向となった。プレドニゾロン漸減中に膿疱の再燃を認め、インフリキシマブを投与し、皮膚症状、全身症状ともに良好に経過した。 |
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抗ヒトIL-17受容体Aモノクローナル抗体製剤であるブロダルマブは、治療抵抗性の尋常性乾癬や膿疱性乾癬などの治療薬として使用されている。本症例は、膿疱性乾癬に対してブロダルマブを投与したところ、皮膚症状の改善を認めたものの、胸膜炎や大動脈炎の発症を認め、全身状態が急激に悪化した1例である。胸膜炎、大動脈炎が膿疱性乾癬に随伴した可能性も否定できないが、ブロダルマブの投与により、IL-17受容体Aが関与していないIL-17受容体をもつ内皮細胞やマクロファージなどにIL-17が過剰に作用した結果、胸膜炎、大動脈炎が発症した可能性も考えられた。
- 著者(発表者)
- 吉岡愛育ほか
- 所属施設名
- 神戸大学大学院医学研究科内科学講座皮膚科学分野ほか
- 表題(演題)
- 抗ヒトIL-17RAモノクローナル抗体ブロダルマブを投与後に胸膜炎,大動脈炎を発症した膿疱性乾癬の1例
- 雑誌名(学会名)
- 臨床皮膚科 73(11) 875-882 (2019.10)
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