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トリアムシノロンアセトニドによる眼球穿孔

2020年3月掲載

薬剤 トリアムシノロンアセトニド感覚器官用薬
副作用 眼球穿孔
概要 48歳、男性。ぶどう膜炎増悪のため27G鋭針で左眼トリアムシノロンアセトニド(TA)20 mgテノン嚢下注射を施行し、直後に眼痛と視力低下を自覚した。角膜上皮浮腫、眼圧上昇、硝子体腔にTAを認めたため眼球穿孔を疑われ、緊急受診した。左眼は上方球結膜に結膜下出血と、軽度の角膜上皮浮腫を認めたが、明らかな網膜剥離は検出できなかった。テノン嚢下注射時の上方強膜からの眼球穿孔とTA眼内注入の可能性を考え、同日に硝子体手術が施行された。
術中、眼内に塊状のTA、上方に網膜穿孔、その周囲に出血性の網膜剥離を認めた。裂孔周囲を眼内レーザーで凝固し、20% SF6ガスタンポナーデで手術を終了した。術後2週間で左眼矯正視力は改善し、術後1ヵ月後の視野検査でも異常は認められず、経過は良好である。

監修者コメント

本症例は、ぶどう膜炎増悪のため、トリアムシノロンアセトニドのテノン嚢下注射を行ったところ、眼球穿孔を生じた1例である。テノン嚢下注射は特別な設備や特殊な技術の必要がなく合併症も少ないため、日常診療でも広く行われている。比較的安全な手技ではあるものの、結膜下浮腫や結膜下出血などの軽微な合併症から、球後出血や視神経損傷といった重篤な合併症に至るまで種々の合併症が報告されている。テノン嚢下注射を行う際には、細心の注意を払いながら施行し、慎重に経過観察を行うことが重要である。

著者(発表者)
谷彰浩ほか
所属施設名
徳島大学大学院医歯薬学研究部眼科学分野
表題(演題)
トリアムシノロンアセトニドテノン嚢下注射により眼球穿孔を生じた1例
雑誌名(学会名)
臨床眼科 73 (10) 1308-1312 (2019.10)
第72回 日本臨床眼科学会

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