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オシメルチニブによるたこつぼ型心筋症、急性心不全

2020年3月掲載

薬剤 オシメルチニブ腫瘍用薬
副作用 たこつぼ型心筋症、急性心不全
概要 80歳、女性。肺腺癌と診断され、ゲフィチニブ、エルロチニブによる治療後、3次治療としてオシメルチニブが投与されていた。この時点の心エコー検査では左室駆出率(EF)=70 %と左室収縮能は保たれていた。しかし、8ヵ月が経過したころから胸痛を伴う呼吸困難が出現したため、救急搬送された。胸部X線で肺うっ血および心陰影の拡大を認め、BNP:4340 pg/mLと高値で、心エコーにて心尖部の壁運動を伴うEF低下(36 %)も認めた。心電図上でV1-V4に陰性T波を認め、トロポニンI値が上昇(1325 pg/mL)していたため急性冠症候群を疑ったが、冠動脈に有意狭窄は確認できなかった。オシメルチニブによるたこつぼ型心筋症と診断され、同薬を中止したうえで急性心不全に対する治療を開始したところ、EFは42 %まで改善し、心不全症状も軽快した。

監修者コメント

チロシンキナーゼ阻害剤であるオシメルチニブは、EGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌に対する治療薬として使用されている。本薬剤の副作用として、間質性肺炎やQT間隔延長などが報告されているが、本症例のようなたこつぼ型心筋症は極めて稀である。本疾患は、収縮期の心臓の動きが局所的に悪くなり、その形態が「たこつぼ」に似ていることから、「たこつぼ型心筋症」と名付けられている。本薬剤の投与中に胸痛や呼吸困難などが認められた場合には、たこつぼ型心筋症の可能性も考慮すべきである。

著者(発表者)
前嶋康浩ほか
所属施設名
東京医科歯科大学医学部附属病院循環器内科
表題(演題)
オシメルチニブの長期投与中にたこつぼ型心筋症による急性心不全を発症した1例
雑誌名(学会名)
第2回 日本腫瘍循環器学会学術集会 プログラム・抄録集 100 (2019)
第2回 日本腫瘍循環器学会学術集会 (2019.9.21-22)

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