インフルエンザワクチン接種後の血球貪食性リンパ組織球症
2020年3月掲載
薬剤 | インフルエンザワクチン生物学的製剤 |
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副作用 | 血球貪食性リンパ組織球症 |
概要 | 77歳、女性。来院7日前に他院でインフルエンザワクチンを接種した。来院5日前に37℃台の微熱と嘔気、倦怠感を自覚し、症状が持続するため他院を受診した。血液検査で白血球減少と血小板減少を認め、ロキソプロフェンとランソプラゾールを処方されたが症状は改善せず、当院入院となった。入院時検査でフェリチン高値が判明し、骨髄穿刺でもマクロファージの増生と血球貪食像がみられ、発熱、血球減少とあわせて血球貪食性リンパ組織球症(HLH)が強く疑われた。HLHに準じてメチルプレドニゾロンパルスが開始され、治療に対する反応は良好であり、後療法としてプレドニゾロン経口投与に切り替え、漸減中止された。その後、維持療法は行われなかったが再燃なく経過した。直接的な因果関係は証明できないが、インフルエンザワクチン接種がHLHの発症に関与した可能性が考えられた。 |
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HLHはマクロファージやCD8陽性T細胞が過剰に活性化することで発熱、血球減少、肝脾腫などを生ずる疾患であり、致死的な経過をたどることもある。成人では、ウイルス感染症、悪性リンパ腫、自己免疫疾患に伴う症例が多いが、本文献では、インフルエンザワクチン接種後に発症した稀なHLHの1例を報告している。
近年、インフルエンザ予防の重要性が周知され、ワクチン接種の機会が増加している。インフルエンザワクチン接種後に倦怠感や血球減少などが認められた場合には、HLHの可能性も考慮し、適切な処置をとる必要がある。
- 著者(発表者)
- 山下諒ほか
- 所属施設名
- 東京慈恵会医科大学附属第三病院総合診療部ほか
- 表題(演題)
- インフルエンザワクチン接種後に発症した血球貪食性リンパ組織球症の1例
- 雑誌名(学会名)
- 日本病院総合診療医学会雑誌 15(5) 447-450 (2019.9)
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