クロザピンによる心筋炎
2020年2月掲載
薬剤 | クロザピン中枢神経用薬 |
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副作用 | 心筋炎、急性腎不全 |
概要 | 50歳、女性。薬剤抵抗性の統合失調症に対してクロザピン(CLZ)を導入したが、第20病日より発熱、軽度の炎症反応を認め、第28病日に全身CTを施行したところ、心不全、肺水腫を認め急性腎不全も合併した。心症状に先行して数日前からかぜ様症状があり、精査によりCLZ誘発性の心筋炎の診断に至り、CLZは中止した。また、この時点で炭酸リチウムを継続していたが、リチウム中毒を合併していたため炭酸リチウムも中止した。急性腎不全の進行があり自尿にも乏しかったため、血液透析が開始となった。発熱に対してはドリペネム水和物が開始され、フロセミド、ニフェジピンにより血圧、利尿などの集中的な全身管理が行われ、徐々に腎機能、炎症反応ともに改善を認めた。 |
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CLZは治療抵抗性の統合失調症に対して使用される非定型抗精神病薬であるが、無顆粒球症、心筋炎、糖尿病性ケトアシドーシスなどの重篤な副作用が出現するリスクがある。本文献では、治療抵抗性の統合失調症患者に対してCLZを導入した後に心筋炎を発症した一例を報告している。心筋炎は、循環器内科医による集中的な治療が必要である。同薬剤を導入する際は、重篤な副作用に十分に対応出来る施設で慎重に行う必要がある。
- 著者(発表者)
- 豐田勝孝ほか
- 所属施設名
- 大阪医科大学神経精神医学教室
- 表題(演題)
- クロザピンによって薬剤性心筋炎を発症し急性腎不全にまで至った1症例
- 雑誌名(学会名)
- 臨床精神医学 48(8) 999-1002 (2019.8)
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