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アプリンジンによる構音障害

2020年2月掲載

薬剤 アプリンジン循環器官用剤
ジゴキシン循環器官用剤
シナカルセトその他の代謝性医薬品
副作用 構音障害
概要 67歳、男性。痛風腎による慢性腎不全のため32歳時に維持透析を開始した。また内服歴にシナカルセト塩酸塩12.5 mgがあった。入院1ヵ月前、発作性心房細動を契機にうっ血性心不全を発症した。除水に加えてジゴキシン0.125 mg/隔日、アプリンジン40 mg/日を投与開始し心不全症状は改善したが、投与2週間後に幻視、四肢のミオクローヌス様不随意運動、意識障害、構音障害が生じ、転院となった。ジゴキシン血中濃度は2.3 ng/mLまで上昇し、ジギタリス中毒を疑い第2病日に中止した。ミオクローヌスと意識障害は徐々に改善したが、構音障害が持続した。アプリンジンによる薬剤性神経障害を疑い、第33病日にアプリンジン血中濃度を測定したところ、3.02(治療域0.25~1.25)µg/mLと上昇していた。アプリンジンを30 mgに減量し、第40病日に構音障害は改善した。発作性心房細動も入院後消失していたため、第45病日にアプリンジンは投与中止となった。

監修者コメント

アプリンジンは頻脈性不整脈の治療薬として広く使用されている薬剤である。本文献では、高齢透析患者に対してアプリンジンを投与したところ、構音障害を発症した一例を報告している。同薬剤は透析患者においても通常投与量で血中濃度は安定しており、不整脈のコントロールに有効との報告もあるが、本症例では血中濃度の上昇を認めた。副作用による神経障害として、振戦、めまい、しびれ感などの報告はあるが、構音障害を呈することは稀であり、貴重な報告といえる。

著者(発表者)
山口靖子ほか
所属施設名
東京都健康長寿医療センター腎臓内科ほか
表題(演題)
アプリンジンにより構音障害を呈した高齢透析患者の1例
雑誌名(学会名)
日本透析医学会雑誌 52(8) 485-489 (2019.8)
第62回 日本透析医学会学術集会・総会 (2017.6)

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