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メサラジンによる視神経症

2020年1月掲載

薬剤 メサラジン消化器官用薬
副作用 視神経症
概要 56歳、女性。左眼の視野欠損を自覚し、その後右眼も見え方が悪化したため近医眼科を受診した。視神経乳頭は両眼とも軽度の発赤、視神経乳頭周囲の血管の拡張と上下耳側の視神経乳頭線維層の浮腫状混濁があり、蛍光眼底造影検査では視神経乳頭からの蛍光漏出はなく、微細血管の拡張がみられた。造影MRIで視神経炎の所見はなく、臨床所見はLeber病と一致していたが、ミトコンドリア遺伝子異常は検出されなかった。副腎ステロイド大量点滴やIdebenon内服を施行するも視力および視野は悪化したため、当院紹介受診となった。病歴を聴取すると、視力低下をきたした1ヵ月前から活動性の潰瘍性大腸炎に対してMesalazine(アサコール)を内服していたため薬剤性視神経症を疑い、発症8ヵ月後より同薬の内服を中止しIdebenon内服を継続したところ徐々に視機能の回復がみられた。

監修者コメント

メサラジンはクローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患に対する治療薬として広く用いられている。本症例はメサラジンの投与により薬剤性視神経症を発症した一例である。その経過はミトコンドリア代謝不全をきたすLeber病と臨床所見が類似しており、後天性のmitochondrial optic neuropathyが疑われている。メサラジンを含む5-アミノサリチル酸製剤(5-ASA製剤)は炎症性腸疾患に対する第一選択薬であり、長期に使用されることも多い。本薬剤の投与中に視力低下などの症状を認めた際には、薬剤性視神経症の合併も考慮し、投薬の中止などを検討すべきである。

著者(発表者)
山上明子ほか
所属施設名
井上眼科病院ほか
表題(演題)
Mesalazineによる薬剤性視神経症の一例
雑誌名(学会名)
神経眼科 36(2) 184-190 (2019.6)

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