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BCGによる感染性腹部大動脈瘤

2020年1月掲載

薬剤 乾燥BCG膀胱内用生物学的製剤
副作用 感染性腹部大動脈瘤
概要 82歳、男性。71歳時に膀胱癌に対しBacillus Calmette-Guerin(BCG)膀胱内注入療法(イムノブラダー®80 mg)を1回施行した既往があった。腰痛を自覚し保存加療を受けていたが、憩室出血で入院した際のCTでL3/4椎体の破壊を伴う化膿性脊椎炎、傍脊柱膿瘍、腸腰筋膿瘍、不整形な嚢状感染性腹部大動脈瘤を認め、精査加療目的に転院となった。
CTガイド下生検で起因菌がBCGと判明したため、イソニアジド、リファンピシン、エタンブトール、レボフロキサシン4剤併用療法を開始し、約6週間投与後にステントグラフト内挿術も施行した。更に起因菌同定検査を施行し、10年前に膀胱注入されたBCG Tokyo株と同一株であることが証明された。術後リファンピシン、イソニアジドの2剤併用へ変更し、計12ヵ月間継続した。その後、感染兆候なく投与を終了し、現在経過観察中である。

監修者コメント

BCG膀胱内注入療法は、表在性膀胱癌や膀胱上皮内癌に対する治療法として1970年代から行われており、その有効性から現在も広く普及している治療法である。本治療法の有害事象として、化膿性脊椎炎や感染性動脈瘤などが報告されている。本症例はBCG膀胱内注入療法後約10年経過してから結核性脊髄炎に合併した感染性腹部大動脈瘤を発症しており、極めて稀な一例といえる。

著者(発表者)
中井信吾ほか
所属施設名
仙台市立病院心臓血管外科ほか
表題(演題)
10年前の膀胱内注入療法時のBCGを起因菌とした結核性脊椎炎に合併した感染性腹部大動脈瘤に対してEVARを施行した1例
雑誌名(学会名)
日本血管外科学会雑誌 28(4) 311-316 (2019.8)
第47回 日本血管外科学会総会 (2019.5.24)

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