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水痘ワクチンによる帯状疱疹、川崎病

2019年12月掲載

薬剤 水痘ワクチン生物学的製剤
副作用 帯状疱疹、川崎病
概要 1歳6ヵ月、男児。近医で1回目の水痘ワクチンを接種し、第3病日から38℃台の発熱を認め、帯状疱疹と診断された。第5病日から眼球結膜充血、手掌紅斑、頸部リンパ節腫脹が出現し、その翌日、口唇紅潮所見も認められたことから川崎病が疑われ、精査加療のため入院となった。帯状疱疹の治療としてアシクロビル経静脈投与を行い経過観察としたところ、第7病日には水疱はすべて痂皮化し、発赤も消退した。また、発熱が持続したため川崎病と診断し、その治療として、免疫グロブリン大量療法(2 g/kg)を開始し、第8病日に解熱した。経過中、再燃や冠動脈瘤の形成も見られず、第13病日に退院した。
水痘ワクチン株ウイルスによる帯状疱疹の可能性を考え、第11病日の痂皮からDNeasy Blood & Tissue Kits(QIAGEN)を用いてtotal DNAを抽出し、水痘・帯状疱疹ウイルス(Varicella-zoster virus:VZV)のgene 62の塩基配列解析を行った。その結果、DNA中に岡ワクチン株に特有とされる7ヵ所の塩基置換を有するVZV gene 62が確認され、岡ワクチン株の再活性化による帯状疱疹と診断した。川崎病に関して、偶然の合併を否定できないものの、帯状疱疹の発症から発熱まで2日、診断まで7日と同時期の発症であったことから、帯状疱疹と川崎病の関連性を疑った。

監修者コメント

本症例は、水痘ワクチン接種後にワクチン株由来の帯状疱疹に罹患し、その経過中に川崎病を発症した1例である。ウイルス遺伝子の解析から、水痘ワクチン株による帯状疱疹と診断され、水痘ワクチンウイルスの再活性化が川崎病の発症につながったと考えられている。ワクチン株由来の帯状疱疹の発症は極めて稀であり、さらに川崎病との関連が疑われた帯状疱疹の報告はない。帯状疱疹の発症が川崎病の原因と断定することはできないが、今後も同様の報告を集積することで、川崎病の病態解明につながる可能性が考えられる。

著者(発表者)
親谷佳佑ほか
所属施設名
苫小牧市立病院小児科ほか
表題(演題)
水痘ワクチン株による帯状疱疹の経過中に川崎病を発症した1例
雑誌名(学会名)
小児感染免疫 31 (2) 151-156 (2019.5)

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