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塩酸メトクロプラミドによる急性ジストニア

2019年12月掲載

薬剤 塩酸メトクロプラミド消化器官用薬
副作用 急性ジストニア
概要 24歳、女性。妊娠6週時に、食欲不振、嘔吐を主訴に前医を受診し、妊娠悪阻の診断で入院となった。細胞外液、ビタミンB剤、塩酸メトクロプラミド点滴(1日投与量、30 mg)が開始されたが、入院翌日より舌痛、舌の動かしにくさ、眼球上転、頭痛が出現し、当院に救急搬送となった。搬送時、塩酸メトクロプラミド10 mgの点滴が行われていたが、薬剤性錐体外路症状としての急性ジストニアが疑われたため、細胞外液とビタミン投与のみで経過観察とした。その2時間後に舌の偏位と眼球上転は軽減し、4時間後に舌の偏位による構音障害も改善した。妊娠悪阻に対する細胞外液、ビタミンB剤の点滴は継続し、2日後に軽快退院となった。

監修者コメント

メトクロプラミドは、中枢性嘔吐、末梢性嘔吐のいずれに対しても優れた制吐作用を示す薬剤であるが、副作用として錐体外路症状を発症することがある。本症例は、メトクロプラミドに起因すると考えられる急性ジストニアを発症した妊娠悪阻の1例である。急性ジストニアを含む薬剤性錐体外路症状の危険因子の1つとして若年女性があり、特に妊娠悪阻を有する本症例のような若年女性は、発症のリスクが高いと考えられる。制吐剤として本薬剤を投与する際には、頻度は少ないものの、錐体外路症状の発症に注意する必要がある。

著者(発表者)
矢壁和之ほか
所属施設名
済生会下関総合病院産婦人科
表題(演題)
メトクロプラミドに起因すると思われる急性ジストニアを発症した妊娠悪阻の一例
雑誌名(学会名)
現代産婦人科 67 (2) 235-238 (2018)

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