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ボノプラザンフマル酸塩によるcollagenous colitis

2019年12月掲載

薬剤 ボノプラザンフマル酸塩消化器官用薬
アムロジピンベシル酸塩循環器官用剤
アトルバスタチンカルシウム循環器官用剤
副作用 collagenous colitis
概要 66歳、女性。難治性の逆流性食道炎(GERD)に対してオメプラゾールを内服していたが、胸焼け症状が悪化したためボノプラザンフマル酸塩(Potassium-Competitive Acid Blocker:P-CAB)に内服を変更した。P-CABへ変更前に、ポリープに対するCold Forceps Polypectomyを施行した際にはポリープ以外の異常は認めなかった。また、既往に高血圧、高脂血症があり、アムロジピンとアトルバスタチンを内服していた。2017年12月ごろから下痢症状が出現し、対症療法に反応が乏しかったため、下部消化管内視鏡検査を施行したところ、S状結腸から直腸に点状発赤と周囲粘膜に浮腫のないひび割れ様の縦走潰瘍を認めた。生検による組織検査では表層上皮直下に肥厚した膠原繊維帯を認め、collagenous colitis(CC)と診断した。P-CABを中止し、H2-blockerに変更したところ、下痢症状は1週間で改善傾向を認め、1ヵ月後には消失した。

監修者コメント

ボノプラザンに起因したCCの1例である。薬剤性CCの起因薬剤の1つとしてプロトンポンプ阻害薬(PPI)が報告されている。PPIがCCを引き起こす機序としては、大腸上皮細胞のプロトンポンプに作用して大腸粘膜からの分泌物の組成やpHを変化させ、免疫反応に影響しているのではないかと推測されている。P-CABも同じプロトンポンプに作用する薬剤であるため、同様の機序の可能性が否定できない。また、PPI起因性のCCの報告では、CYP3A4で代謝される薬剤が併用されている症例が多く、本例でもアムロジピンとアトルバスタチンの2剤が併用されていた。P-CABはH. pylori陰性時代に増加が予想される難治性GERDに対する有効な治療薬であり、今後も使用頻度が増加するものと思われる。P-CABの内服中に持続性の下痢症状などを認めた際には、本合併症も考慮すべきである。

著者(発表者)
小沼宏徳ほか
所属施設名
小沼内科胃腸科クリニック
表題(演題)
ボノプラザン起因性collagenous colitisの1例
雑誌名(学会名)
Progress of Digestive Endoscopy 94(1) 104-106 (2019.6)
第107回 日本消化器内視鏡学会関東支部例会 (2018.12.15-16)

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