ルキソリチニブによる低カルシウム血症
2019年11月掲載
薬剤 | ルキソリチニブ腫瘍用薬 |
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副作用 | 低カルシウム血症 |
概要 | 64歳、女性。11年前、真性多血症(PV)を発症し、8年前よりヒドロキシカルバミドによる治療が開始された。また、7年前に甲状腺乳頭がんに対し甲状腺全摘術を受け、術後副甲状腺機能低下症に対してα-カルシドールを内服していた。2ヵ月前にPVの病勢悪化を認めたため、ルキソリチニブが追加された。投与開始2週間後、四肢のしびれと倦怠感が出現し、ルキソリチニブを減量したが、血清補正カルシウム値は4.9mg/dLと重篤な低カルシウム血症をきたし、心電図にてQT延長を認めた。入院後、グルコン酸カルシウム点滴を行い、その後は血清カルシウム値をモニタリングしながらL-アスパラギン酸カルシウムとα-カルシドール内服下でルキソリチニブを継続し、低カルシウム血症は改善した。 |
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Janus kinase (JAK) 阻害剤であるルキソリチニブは、骨髄線維症や真性多血症の治療薬として使用されている。本症例では、ルキソリチニブによりRANKL発現が抑制され、破骨細胞の分化を阻害することで低カルシウム血症を惹起した可能性が考えられている。通常はPTHを介した代償機構が働くことで、カルシウム値は正常に保たれるが、本症例では、術後副甲状腺機能低下症が背景にあるため、PTHによる代償機構が働かず、重篤な低カルシウム血症に至った可能性が考えられている。今後、同薬剤を使用する際はカルシウムのモニタリングが重要であると考えられる。
- 著者(発表者)
- 辻麻亜子ほか
- 所属施設名
- 赤穂市民病院
- 表題(演題)
- ルキソリチニブ投与後に重症低カルシウム血症を呈したJAK2変異真性多血症の一例
- 雑誌名(学会名)
- 診療と新薬 56(5) 353-357 (2019.5)
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