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ニボルマブによる気管軟骨炎

2019年10月掲載

薬剤 ニボルマブ腫瘍用薬
副作用 気管軟骨炎
概要 63歳、男性。悪性黒色腫と診断され、手術不能例としてニボルマブ投与(2週毎、投与量3 mg/kg)の方針となった。腫瘍は縮小し、計5回の投与終了後の第71病日に退院となった。外来でニボルマブを継続していたが、8回目の投与前に施行した採血で肝機能障害、高CRP血症を認め、投与を中止し精査目的に肝胆膵内科へ入院となった。
造影CTでは気管から両側気管支のびまん性壁肥厚を認め、気管支粘膜の生検標本の病理組織学的検査では、中等度から高度の炎症、びらん、壊死組織、繊維増生を認めた。再発性多発軟骨炎のマーカーとされる抗II型コラーゲン抗体は陽性であった。以上の結果から、気管支軟骨炎に伴う高CRP血症と診断された。
メチルプレドニゾロン(1,000 mg×3日)による治療を開始し、プレドニゾロン(40 mg)とメトトレキサート(8 mg)の投与を続けて行い、加療後約1ヵ月で炎症反応と気管壁改善の改善を認めた。しかし、2ヵ月で腫瘍は再増大し、治療開始後第408病日に死亡退院となった。

監修者コメント

免疫チェックポイント阻害薬であるニボルマブは、悪性黒色腫などの治療薬として使用されているが、特有の副作用として免疫関連有害事象(immune-related adverse event: irAE)が報告されている。本症例は比較的稀な予後不良の疾患である舌根部悪性黒色腫に対してニボルマブを投与したところ、irAEと考えられる気管軟骨炎を発症した。irAEには、甲状腺機能低下や大腸炎・下痢、肝胆道系酵素の上昇などの報告が多いが、気管軟骨炎を含む軟骨炎の報告はなく極めて稀である。免疫チェックポイント阻害薬を使用する際には、様々なirAEを念頭に入れ、他科との連携により対応することが重要である。

著者(発表者)
森茂彰ほか
所属施設名
藤田医科大学医学部耳鼻咽喉科学教室
表題(演題)
舌根部悪性黒色腫に対するニボルマブの投与後に発現した気管軟骨炎
雑誌名(学会名)
口腔・咽頭科 32 (1) 27-32 (2019.3)

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