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炭酸リチウムによる腎性尿崩症、腎濃縮力障害

2019年8月掲載

薬剤 炭酸リチウム中枢神経用薬
副作用 腎性尿崩症、腎濃縮力障害
概要 56歳、男性。双極性障害の加療のため炭酸リチウム1,200mgを内服していた。夜間多尿を自覚し、+14日には口渇も出現した。糖尿病や高カルシウム血症、低カリウム血症などの多尿をきたしうる検査所見を認めず、リチウムのほかには薬剤性腎性尿崩症の頻度の高い薬剤もないことから、リチウム続発性腎性尿崩症が疑われた。約2ヵ月後に行われた検査では飲水制限中でアルギニンバソプレシン(AVP)は 5.1pg/mLへ上昇しているにもかかわらず、尿濃縮は不十分で低張尿が認められた。中枢性尿崩症は否定的であり、リチウム続発性腎性尿崩症と診断し、リチウムを漸減・中止したところ尿濃縮力は改善し、新たな病相は出現せず経過観察となった。

監修者コメント

双極性障害の治療のために内服していた炭酸リチウムにより腎性尿崩症を発症した1例である。同薬剤の添付文書にも重大な副作用として腎性尿崩症が記載されている。リチウム内服中の患者に対しては、定期的に血中濃度の測定を行うことが重要であるが、本症例のように血中濃度が治療域にあっても腎性尿崩症を発症しうるため、注意が必要である。本薬剤の内服中に、多尿、口渇などの尿崩症を疑う症状が出現した場合には、AVPや尿浸透圧を測定し、腎濃縮力障害の評価を行い、適切な処置を行うことが重要である。

著者(発表者)
栗林邦明ほか
所属施設名
医療法人社団愛陽会三川病院精神科ほか
表題(演題)
腎性尿崩症パターンの腎濃縮力障害が先行したリチウム続発性腎性尿崩症の1例
雑誌名(学会名)
精神科治療学 34(2) 237-242 (2019.2)

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